週2時間のボランティア活動 死亡リスクが4割減
米国の中高年1万3000人を対象とした研究
大西淳子=医学ジャーナリスト
年間100時間以上、1週間当たりにすると2時間程度のボランティア活動に従事する人は、ボランティア活動と縁のない人たちと比べて死亡リスクが4割程度低いことを示す研究結果が報告されました。ボランティア活動の利益は、身体障害を負うリスクの低下や、心の健康状態の向上にも及ぶことも示唆されました。

ボランティア活動は本当に心身の健康に好ましい影響を及ぼす?
これまでにも、ボランティア活動が、健康状態や幸福感などに好ましい影響を及ぼすことを示した報告はありましたが、そうした利益を否定する研究結果もありました。今回、米ハーバード公衆衛生大学院などの研究者たちは、大規模疫学研究「Health and Retirement Study」に参加した50歳超の1万2998人の情報を分析し、ボランティア活動に携わる時間と、身体および心の健康状態や、健康にかかわる生活習慣などの関係を明らかにしようと考えました。
参加者たちに過去12カ月間にボランティア活動に費やした時間を質問し、回答に基づいて「0時間」、「1~49時間」、「50~99時間」、「100時間以上」に分類しました。
続いて、ボランティア活動時間と関係する可能性のある、34の健康関連項目(下記参照)について評価しました。
34の健康関連項目の内訳
- 体の健康に関する要因(14項目):あらゆる原因による死亡、慢性疾患の保有数、糖尿病、高血圧、脳卒中、がん、心臓病、肺疾患、関節炎、過体重/肥満、身体障害、認知障害、慢性疼痛、自己申告された健康状態
- 健康に影響する生活習慣(4項目):大量飲酒、喫煙、運動習慣、睡眠障害
- 精神的な健康状態に関する要因(12項目):ポジティブ感情、人生満足度、楽観性、生き甲斐、マステリー*、健康マステリー**、経済的マステリー***、抑うつ、抑うつ症状、絶望、ネガティブ感情、制約知覚‡
- 社会的な要因(4項目):孤独、子どもとのコミュニケーション、他の家族とのコミュニケーション、友人とのコミュニケーション(いずれのコミュニケーションも、電話や電子メールを含む)
* 困難もしくはストレスに満ちた状況に対して適応能、統制能、支配能を獲得していく人間の反応
** 自身の健康状態のコントロール状態
*** 自信の経済的な状況のコントロール状態
‡ 自身の人生に起こる出来事を自分でコントロールできていないという感覚
分析においては、年齢、性別、人種、パートナーの有無、世帯年収、資産、学歴、雇用状況、健康保険加入の有無、居住地域、宗教団体の集会への参加、個性(寛大、良心的、外交的、神経質など)、小児期の虐待の有無などを考慮しました。