睡眠時間は短すぎても長すぎても認知症リスクが高まる
5時間未満と10時間以上でリスク上昇、日本の高齢者における研究
大西淳子=医学ジャーナリスト
1日の睡眠時間が5時間未満の人や10時間以上の人は、5時間~7時間未満の人に比べて認知症や死亡のリスクが高いことが、わが国の高齢者を対象にした研究で明らかになりました。

60歳以上の日本人約1500人のデータを10年間追跡
先進国の高齢者には、寝つきの悪さ(入眠障害)や、夜中に目が覚めて眠れなくなる(中途覚醒)などの睡眠障害に悩む人が多く、睡眠薬が処方されることも少なくありません。睡眠時間が短いことは、健康にどのような害を及ぼすのでしょうか。また、睡眠薬はそうした害を軽減するのでしょうか。
これまでに行われたいくつかの研究では、睡眠時間が短い、または、長いことが、死亡リスクの上昇と関係することが示唆されています。睡眠時間と認知障害の間にはU字形の関係があると報告する疫学研究もありました。しかし、東洋人における睡眠時間と認知症発症の関係は、十分に調べられていませんでした。
そこで九州大学の小原知之氏らは、日本の高齢者を対象として、毎日の睡眠時間と認知症および死亡の関係を調べるために、日本を代表する大規模疫学研究である「久山町研究」のデータを分析しました。対象となったのは、福岡県糟屋郡久山町に暮らす60歳以上の人々で、登録時には認知症ではなかった1517人(男性667人、女性850人)です。
登録時に自己申告された、昼寝も含む1日の睡眠時間に基づいて、人々を以下の5群に分けました。
- 5時間未満(32人、平均年齢71.6歳、男性が50.1%)
- 5時間以上7時間未満(405人、68.9歳、33.2%)※参照群
- 7時間以上8時間未満(446人、69.1歳、40.2%)
- 8時間以上10時間未満(522人、70.8歳、51.0%)
- 10時間以上(92人、73.8歳、65.6%)