下肢の筋力アップに、ほうれん草や小松菜の「硝酸塩」
硝酸塩を多くとる人たちは年齢や運動量に関わらず筋機能が良好
大西淳子=医学ジャーナリスト
1日90mg程度でいずれのテストも最良の結果
必要な情報がそろっていた男女3759人(平均年齢48.6歳、女性が56%)について分析したところ、硝酸塩の1日の総摂取量の中央値は65mgでした。対象者を硝酸塩の摂取量が少ない方から3分の1(最低三分位群;摂取量56.7mg未満、中央値46.5mg)、摂取量が多い方から3分の1(最高三分位群;摂取量75.6mg以上、中央値91.2mg)と、その中間(第2三分位群;中央値65.3mg)に三等分しました。最高三分位群は、硝酸塩の85%を野菜から取っており、第2三分位群は81%、最低三分位群は76%を野菜から摂取していました。
膝関節伸展筋力の測定値は、最低三分位群が23.6kg、第2三分位群は24.7kg、最高三分位群は26.2kgで、最低三分位群と比べると、最高三分位群の膝関節伸展筋力の測定値は11%高くなっていました(統計学的有意差あり)。第2三分位群と最高三分位群の差も有意になりました。また、TUGテストに要した時間はそれぞれ、6.23秒、6.06秒、5.99秒で、最低三分位群と比べると、最高三分位群では4%短くなっていました(統計学的有意差あり)。
異なる分析方法を用いても、硝酸塩摂取量が多い集団のほうが、これらの結果は良好であることが示されました。
硝酸塩の摂取量を横軸とし、膝関節伸展筋力の測定値またはTUGテストの結果を縦軸として、個々の人々の値をプロットすると、これらの関係は直線的ではなく、いずれのテストでも硝酸塩摂取量が1日90mg程度のところで最も良好になることが明らかになりました。
硝酸塩摂取量と、膝関節伸展筋力の測定値およびTUGテストの結果、すなわち筋機能の関係に、日常的な身体活動量が及ぼす影響についても検討しましたが、有意な影響は見られず、年齢(65歳以上か未満か)も有意な影響を及ぼしていませんでした。
また、硝酸塩の摂取源を、野菜かそれ以外かに分けて筋機能との関係を調べたところ、今回得られた有意な関係は、主に野菜から摂取した硝酸塩によってもたらされていることが分かりました。
毎日の食事において、主に野菜からの硝酸塩の摂取量が多いことは、年齢や運動習慣に関わらず下肢の筋力を強化し、筋機能を高めるために役立つ可能性が示唆されました。
1日に90mgの硝酸塩を、たとえばほうれん草から摂取するとしたら、葉が6~8枚ついているやや大きめの一株(可食部が約45g)で目標は達成されそうです。
論文は、2021年3月24日付のJournal of Nutrition誌電子版に掲載されています(*3)。
硝酸塩について、「国際オリンピック委員会(IOC)は2018年に、硝酸塩をドーピング物質に指定しました」と記載しておりましたが、ドーピング物質ではなく正しくは「ergogenic aid」(運動能力に影響する可能性のある栄養素や成分)でした。お詫びして訂正いたします。本文は修正済みです。[2021/9/17 18:15]
医学ジャーナリスト
