エボラワクチン、臨床試験で予防効果100%
ギニアで実証、アウトブレイク時の感染拡大予防に期待
大西淳子=医学ジャーナリスト
2014年に西アフリカで過去最大のアウトブレイクが発生し、1万1000人以上の死亡者を出した、エボラウイルスによるエボラウイルス病(エボラ出血熱)。現在、流行は沈静化に向かっているものの、新規感染者の報告は続いており、いつかは、日本国内でもエボラウイルスの感染者が見つかる日が来るのではないか、という不安は消えません。
エボラウイルス病を予防するワクチンの登場が待たれているなか、先頃ギニアで行われた、最も開発が進んでいるワクチンの臨床試験で、めざましい結果が出ました。実用化は目前と期待されます。
患者と接触した人、さらにその人々と接触した人にワクチンを接種

この臨床試験の結果は、イギリスの医学雑誌「Lancet」の電子版に2015年8月3日に掲載されました。
ワクチンの基になっているのは、口内に水疱ができるタイプの口内炎を引き起こすウイルスです。このウイルスに手を加えて、エボラウイルスの部品(糖たんぱく質)を持たせたものが、今回ワクチンとして使用されました。
世界保健機関(WHO)などが臨床試験の場所に選んだのは、ギニアの首都近辺の地域です。ギニアは国家的なサーベイランスを行っており、エボラウイルス病の疑いがある患者を早い段階で検出できます。
今回の臨床試験には、リングワクチン接種(包囲ワクチン接種とも呼ばれます)という方法を用いました。これは1970年代に天然痘の撲滅に用いられた予防接種戦略です。具体的には、エボラウイルス病発症者と接触した人と、それら接触者と接触した人を選んで、ワクチンを接種しました。目的は、エボラウイルス病の発症を予防する効果とワクチンの安全性を調べることにありました。
接種対象者は、以下のように選びました。まず、(1)検査を受けてエボラウイルス病であることが確定した患者と過去21日間に接触した全ての人々、さらに、(2)それら接触者と接触した人々(家族や隣人など)―を調べあげました。その中から、18歳以上で、エボラウイルス病にかかったことがなく、妊娠、授乳をしていない人を接種対象者にしました。
ワクチンは全員に接種しましたが、接種時期は2通り、すなわち、速やかに1回接種する群(即時接種群)、または21日後に1回接種する群(遅延接種群)のいずれかとし、腕の付け根の筋肉に注射しました。