ガイドライン推奨の運動をする人は死亡リスクが40%減
米国で検証、筋トレよりも有酸素運動の方が幅広い利益
大西淳子=医学ジャーナリスト
国のガイドラインが推奨するレベルの運動を実践していれば死亡リスクが低下する可能性があることが、米国で行われた研究で明らかになりました。筋トレと有酸素運動の両方が推奨レベルを満たしていた人の死亡リスクは、運動不足の人に比べ40%低下していました。

国が推奨するレベルの運動をすれば死亡リスクは減少する?
運動不足は、健康にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られているため、世界の多くの国が、国民に対して定期的に体を動かすことを推奨し、行うべき運動のレベルも提示しています。
米国で2018年に改訂された「米国民のための身体活動ガイドライン第2版」(*1)は、米国の成人に対して、以下のような内容の筋トレと有酸素運動を、余暇時間に実施することを推奨しています。しかし、このレベルの運動をすれば死亡リスクが低下することを示す確かなエビデンスはありませんでした。
米国民のための身体活動ガイドライン第2版が推奨している運動量(成人)
- 筋トレ
- 主要筋群の全てを使う中強度以上の筋トレを、週に2日以上実施
- 有酸素運動
- 中強度の運動*を1週間に150分以上、または、高強度の運動**を1週間に75分以上実施。もしくは、中強度の運動と高強度の運動を組み合わせて週に2日以上実施
*中強度の運動:3メッツ~6メッツ未満(軽く汗をかく、または、呼吸数もしくは心拍数がある程度増加するレベル。例:早歩き、水中エアロビクス)
**高強度の運動:6メッツ以上(しっかり汗をかく、または、呼吸数もしくは心拍数が大きく上昇するレベル。例:ジョギング、泳いでプールを何往復もする)
メッツ(METs)は、静かに座っているとき(安静時)を1とした場合の運動強度を示す。
そこで中国や米国の研究者たちは、大規模観察研究に蓄積されている米国の成人の運動習慣に関する情報と、その後の死亡に関するデータを分析して、このガイドラインに沿ったレベルの運動を行うことと死亡リスクの関係を明らかにしようと考えました。
分析対象にしたのは、米国で60年以上前に始まった大規模観察研究「National Health Interview Survey(NHIS)」に1997年から2014年までに登録されていた、18歳以上の47万9856人のデータです。これらの参加者1人1人の運動習慣に関するデータと、National Death Index(NDI)に2015年12月31日までに登録されていた死亡に関する情報を関連づけました。
著者らは、分析対象者を、1週間に行う筋トレと有酸素運動の量に基づいて以下の4群に層別化しました(なお、ガイドラインが推奨する有酸素運動のうち、中強度の運動について、この研究では「低~中強度の運動」と定義しています)。
(1)
有酸素運動も筋トレも推奨量に満たない運動不足:26万8193人(55.9%)
(2)
筋トレのみが推奨レベル以上:2万1428人(4.5%)
(3)
有酸素運動のみが推奨レベル以上:11万3851人(23.7%)
(4)
有酸素運動と筋トレの両方が推奨レベル以上:7万6384人(15.9%)
