チョコレートを頻繁に食べている人の認知能力は高い
カカオフラバノールによる血流の増加が好影響か
大西淳子=医学ジャーナリスト

チョコレートを頻繁に食べている人ほど、認知機能が高い傾向にあることが、オーストラリアSouth Australia大学のGeorgina E.Crichton氏らの研究で明らかになりました。
チョコレートは、カテキン、エピカテキンなどのフラバノール(ココアフラバノールまたはカカオフラバノールと呼ばれています)を豊富に含んでおり、健康にさまざまな利益をもたらすと考えられています。特に、循環器に対する好ましい影響を示すデータは蓄積されつつあります。しかし、認知機能との関係を調べた研究では、一貫した結果は得られていませんでした。
そこで、Crichton氏たちは、米国の成人のデータを利用して、習慣的なチョコレート摂取頻度と認知機能の関係を分析する質の高い研究を行うことにしました。
チョコレートの摂取頻度が高いほど認知機能のスコアも高い
Crichton氏らが今回の研究を行ったきっかけは、2件のランダム化比較試験(*1)の報告でした。それらはいずれも少人数を対象とした予備的な研究でしたが、フラバノールを摂取してから90~120分後以降に、認知機能が向上する可能性を示したものでした(詳しくは3ページ目の囲み参照)。
これらの結果を受けて、Crichton氏らは、MSLSと名付けられた長期にわたる研究に2001~2006年に参加した、23歳から98歳までの968人を対象に、習慣的なチョコレート摂取と認知機能の関係を調べました。MSLSは、循環器疾患のリスク因子と認知機能の関係を調べるために1975年に始まった研究です。
MSLSでは、食物摂取頻度調査のなかでチョコレートの摂取頻度を尋ねていましたが、ミルク、ダーク、ホワイト、といった種類別の調査は行っていませんでした。968人中337人(34.8%)は「全く食べない/まれにしか食べない」と回答し、631人(65.2%)は「1週間に1回以上食べる」と回答しました。うち、265人(27.4%)は1週間に1回、366人(37.8%)は1週間に2回以上食べていました。
これらの人たちについて、広範な認知機能検査の結果を調べました。その中には、認知症の診断に日本でも用いられているMMSE(ミニメンタルステート検査)も含まれていました。それらのスコアについて、チョコレート摂取頻度との関係を調べたところ、チョコレートの摂取頻度が高いほど認知機能のスコアも高い傾向があることが示されました。