早死にしにくい油は不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸とトランス脂肪酸を多くとる人は死亡リスクが高い
大西淳子=医学ジャーナリスト

日常的に摂取する脂質の種類が死亡リスクに大きな影響を与えることが、12万人を超える米国人を追跡した研究で示されました。
米国のハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院(Harvard University T.H. Chan School of Public Health)のDong Wang氏らが、2016年7月5日付の米国「JAMA Internal Medicine」誌電子版に報告した論文(*1)によると、バター、チーズ、肉などに含まれる飽和脂肪酸の摂取量が多いほど死亡リスクは上昇し、オリーブオイルや大豆油、魚、魚油などに含まれる不飽和脂肪酸を多く摂取する人では死亡リスクは低下。死亡リスクの上昇が一番大きいのは、マーガリンやショートニングに含まれるトランス脂肪酸をたくさん摂取する人たちであることが確認されました。
特定の脂肪酸の摂取は死亡に関係するのか? 12.5万人を追跡
「飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸を摂取し、トランス脂肪酸の摂取を控えた方が健康に良い」ということは既にいわれていますが、実は、これまでに行われた、特定の食物脂肪の摂取と死亡の関係について調べた研究では、一貫した結果は得られていませんでした。
そこでWang氏らは、米国の医療従事者を対象とする大規模で長期的な2件の研究に参加した、女性8万3349人(1980年7月1日から2012年6月30日まで追跡)と、男性4万2884人(1986年2月1日から2012年1月31日まで追跡)のデータを分析しました。それらの人々は、研究に参加した時点では、心血管疾患、がん、糖尿病(1型/2型)ではありませんでした。
参加者の食物の摂取状況は、試験に参加した時点と、それ以降2~4年ごとに調査しました。脂肪酸の種類を問わないあらゆる脂質の摂取量と、各種脂肪酸ごとの摂取量は、調査期間中の値を平均して算出。それぞれの摂取量に基づいて参加者を5等分し、最も摂取量が少なかったグループ(最低群)と、最も摂取量が多かったグループ(最高群)の死亡率を比較しました(脂肪酸の種類については文末の解説を参照)。
女性を32年間、男性は26年間追跡したところ、3万3304人が死亡していました。得られた結果をまとめると、次ページのようになりました。