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あまり笑わない人の死亡リスクは、よく笑う人の2倍

山形県の中高年1万7000人を対象にした研究

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 声を出して笑う機会が少ない人は、週に1回以上声を出して笑う人に比べ、死亡と心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞、狭心症など)のリスクが約1.6倍から2倍になることが、日本の中高年1万7000人を対象にした疫学研究で示されました。

最近、声を出して笑ったのはいつ?(C)Antonio Guillem-123RF

ポジティブな気分が病気を遠ざける研究結果はこれまでにも

 これまでに行われた研究で、ポジティブな気分が、死亡と心血管疾患のリスクの低下に関係すること、抑うつ、不安、心理的苦痛などが、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症など)や脳血管疾患(脳卒中など)のリスク上昇に関係することが示されていました。また、のんきで楽天的、日常的に笑う機会が多く、外向的であることが、長寿に関係するという報告もありました。

 今回、山形大学医学部教授の櫻田香氏らは、同学部が行っている分子疫学研究「山形スタディ」に参加した人々を対象に、笑う頻度と、その後の「あらゆる原因による死亡」および「心血管疾患の発症または心血管疾患による死亡(これらをまとめて『心血管イベント』と定義)」の関係を調べました。

 山形スタディは、山形県内の7つの市に住む40歳以上の男女のうち、年1回の健康診断を受けていた人々に参加を呼びかけたものです。2009~2015年に2万969人を登録し、中央値で5.4年、最長8年追跡しました。

 登録時点で、健康状態、飲酒、喫煙、運動習慣、学歴、配偶者の有無、過去1年間に経験した精神的ストレスの強さ、社会参加の頻度などの情報を得るとともに、声を出して笑う(以下、「笑う」と略)機会がどのくらいあるかを尋ねました。回答は、ほぼ毎日、週に1~5回、月に1~3回、月に1回未満、から選択してもらい、回答に基づいて「週に1回以上」、「月に1回以上週に1回未満」、「月に1回未満」の3群に分けました。

 登録時点で収集された情報がそろっており、追跡を完了できた1万7152人を分析対象にしました(男性7003人、女性1万149人、平均年齢62.8歳)。

 全体の82.2%が、週に1回以上笑っていました。笑う頻度が月に1回以上週1回未満の人は全体の14.5%で、月に1回未満は3.3%にとどまりました。笑う頻度が低かったグループには男性が多く、喫煙者や、糖尿病患者が多く、配偶者がいない人、運動しない人が多く見られました。

 研究者たちは、これら3群の人々の、あらゆる原因による死亡と、心血管イベントのリスクを比較しました。

笑うことがほとんどない人は死亡リスクが1.95倍

 追跡期間中に257人(1.5%)が死亡し、138人(0.8%)が心血管イベントを経験していました。笑う頻度が週1回以上の集団を参照群として、月1回以上週1回未満群と、月に1回未満群の死亡と心血管イベントのリスクを推定しました。

 年齢、性別、高血圧の有無、喫煙習慣、飲酒習慣などを考慮して比較したところ、笑う頻度が月1回未満の人々は、あらゆる原因による死亡リスクが1.95倍になっていました。月1回以上週1回未満群のリスクは、参照群との間に有意差を示しませんでした。

 心血管イベントのリスクは、月1回以上週1回未満群で1.62倍になっていました。月1回未満群では、心血管イベントを経験した人が6人しかいなかったため、分析結果の精度は低く、はっきりした結果は得られませんでした。

 日本人を対象とした今回の研究で、笑う頻度が低いことは、死亡と心血管イベントの危険因子であることが示されました。

 論文は、2019年4月6日付のJournal of Epidemiology誌電子版に掲載されています(*1)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。