飲酒が乳がんリスクの上昇に関係 日本人女性でも確認
飲酒習慣がある人の乳がんリスクは、飲まない人の1.5倍
大西淳子=医学ジャーナリスト
日本人女性の乳がん発症リスクの上昇に飲酒が関係することが、約3万3000人を20年以上追跡した観察研究で明らかになりました。

アルコール飲料、緑茶、コーヒーと乳がんの関係を検討
近年、日本人女性の乳がん発症率が上昇しています。海外で行われたいくつかの研究では、飲酒が乳がんリスクを高めることが示唆されていますが、日本人の女性でも同じことが言えるかどうかは不明でした。
そこで今回、京都大学などの研究者たちは、アルコール飲料も含む一般的な飲み物が日本人女性の乳がんリスクに及ぼす影響を調べるために、「JACCスタディ」(*1)の参加者のデータを分析しました。JACCスタディでは、飲料の摂取習慣や、その他の生活習慣に関する情報を、質問票を用いて収集していました。
著者らは今回、アルコール飲料のほか、非アルコール飲料の代表である緑茶とコーヒーの摂取と乳がんの関係について検討しました。コーヒーや緑茶が健康に好ましい影響を及ぼすことを示した報告は複数ありますが、それらの飲料と乳がんリスクの関係については、これまで一貫した結果は得られていなかったからです。
緑茶とコーヒーの摂取頻度は、以下の4つから選択してもらいました:毎日/週に3~4杯/週に1~2杯/月に1~2杯。飲酒習慣についてはまず、飲酒歴なし/過去に飲酒していたが今はなし/現在も飲酒習慣あり、のいずれかを選択してもらい、現在も飲酒している人には、飲酒頻度(週1回未満/週に1~2回/週に3~4回/毎日)、1回の飲酒量、好んで飲むアルコール飲料の種類(日本酒/ビール/ウィスキー/ワイン/その他、複数選択可)も選んでもらいました。
また、分析に影響を与える可能性のある要因として、研究に参加した時点の年齢、学歴、BMI(体格指数)、青野菜の摂取頻度、赤身肉の摂取頻度、運動量、喫煙習慣、出産歴、乳がん家族歴、初潮年齢などの情報を収集しました。
飲酒者の乳がん発症リスクは飲まない人の1.46倍
分析対象としての条件を満たし、20年以上にわたる追跡を完了できて、必要な情報がそろっていたのは、国内の24地域に住む、40歳から79歳の女性3万3396人(研究参加時点の平均年齢は57.7歳)でした。
これらの女性が最も多く摂取していた非アルコール飲料は緑茶でした。参加者の81.6%が毎日飲むと回答していました。一方で、コーヒーを毎日飲んでいたのは34.7%で、アルコール飲料を飲むと回答していた女性は23.6%にとどまりました。