歩きやすい街の住人は肥満や糖尿病になりにくい
ポイントは自動車利用率の低さ
大西淳子=医学ジャーナリスト
車依存度の高い街に比べ、ウォーカビリティの高い街、すなわち、必要な場所に歩いて行ける、歩きやすい街に住んでいる人は、肥満や糖尿病になりにくい―。そんな研究結果を、カナダの研究者らが報告しました。論文は、米国医師会が発行する「JAMA(The Journal of the American Medical Association)」誌2016年5月24/31日号に掲載されています。
ウォーカビリティの高い街では徒歩・自転車移動が多い

近年、先進国では肥満や糖尿病の患者が増えています。これを抑制するための公衆衛生上の対策の一つとして注目されているのが、都市環境作りです。
ウォーカビリティ(walkability)は、英語の「歩きやすい/歩行に適した」という形容詞「walkable」の名詞形です。その街が歩きやすいかどうかは、歩きやすさを数値化したwalkability indexを用いて評価します。この指標は、人口密度、住宅密度、徒歩10分以内で行ける場所の数(店舗、銀行、コミュニティーセンター、図書館、学校など)、道路の連結性(交差点の数)の4項目からなります。スコアは0~100の範囲で、高スコアほどより「歩きやすい街」であることを示します。
分析対象にしたのは、オンタリオ州南部の都市部に散在する、人口400~700人の住宅地8777カ所です。2001年から2012年まで、それら地域に住む30~64歳の人々の健康状態に関する情報を得ました。それらの中には、過体重、肥満、糖尿病の有無や、運動量、食事の内容といった生活習慣に関する情報も含まれていました。
対象とした住宅地全体のwalkability indexのスコアの中央値は16.8でした。個々の住宅地をそれぞれのスコアに基づいて5群に分けたところ、スコアが下位20%の住宅地では、スコアの中央値は10.1、20~40%の住宅地の中央値は13.7、40~60%の住宅地では16.8、60~80%の住宅地では20.9、上位20%の住宅地は35.2でした。各地域のスコアは、時間が経過しても、ほぼ変化していませんでした。
どの時点でも、ウォーカビリティの低い街(walkability indexのスコアが下位20%の群)に比べウォーカビリティの高い街(上位20%の群)で、毎日、徒歩または自転車で移動する人の割合が高く、公共輸送機関利用率も高く、自動車利用率は低くなっていました。
この記事の概要
