猛暑で扇風機を使うと熱中症になりやすいって本当?
高温多湿の4つの条件で検証
大西淳子=医学ジャーナリスト

気温が体温に近くなり、湿度も高い場合には、扇風機は使わないほうがよい、かえって熱中症になりやすくなるから―という話を聞いたことがありませんか。
扇風機の効能は、体温により温められ、体表面によどんでいる空気を、室内の少し温度の低い空気と入れ替えることと、体表面の汗の蒸発を促進させて気化熱を奪うこと、によって発揮されると考えられています。しかし、室内の気温が体温と同様かそれ以上になれば、熱風は体表面を温めるばかりで、湿度が高くなれば汗は蒸発しなくなるだろうから、体に熱がこもって具合が悪くなるだろう―。そうした考えから、高温多湿時の扇風機の使用は控えたほうがよい、といわれているようです。
米環境保護局(EPA)も、扇風機の能力には限界があり、気温が37.2℃を超えた状態で扇風機を使用すると、熱中症のような病気の発症が早まる、と注意を喚起しています(*1)。
が、実は、熱波が原因で発生する病気や死亡に、扇風機の使用がどのような影響を及ぼすのかについては、明らかになっていません。高温多湿時の扇風機の使用は、本当に体に悪いのでしょうか。
扇風機がある方が心拍数や深部体温の上昇を抑えられる
ここで興味深い研究結果をご紹介しましょう。オーストラリアのシドニー大学のNicholas M. Ravanelli氏らが、2013年夏に、カナダのオタワ大学で男子学生を対象に行った研究です。
Ravanelli氏らは、扇風機の使用が心拍数、深部体温(食道温)、発汗に及ぼす影響を調べるために、8人の健康な男性(平均年齢23歳、平均体重80.7kg)に被験者になってもらい、4つの異なる条件の個室の中にそれぞれ1回ずつ、135分間、Tシャツ短パン姿で座ってもらいました。個室の条件は以下の4通りです:「扇風機あり/室温36℃」「扇風機なし/室温36℃」「扇風機あり/室温42℃」「扇風機なし/室温42℃」。