アルカリ性食品の摂取が少ない男性は糖尿病になりやすい
50歳未満の男性は食事のバランスに注意!
大西淳子=医学ジャーナリスト
肉や魚、チーズなど体を酸性に傾かせる食品の摂取が多く、野菜、果物、豆類といった体を塩基性(アルカリ性)にする食品の摂取が少ない男性は、糖尿病を発症するリスクが高いことが、日本で行われた大規模疫学研究で明らかになりました。論文は、2016年4月6日付のJournal of Nutrition誌電子版に掲載されています。
かつてのアルカリ性食品ブームとは異なる、新たな仮説を検証
がん、循環器疾患、糖尿病などの発症には、食習慣や運動量、喫煙や飲酒などが深く関わっており、生活習慣を改善すればこれらの発症をある程度防げると考えられています。では、具体的にどのような生活改善を行えば健康に利益が得られるのでしょうか。それを明らかにするために日本で行われているのが、JPHC Study「多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究」です。
JPHC Studyには、国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、全国11の保健所、大学や研究機関などが参加し、日本全国の約10万人を10年間追跡しています。その成果の一つとして今回報告されたのが、食事の酸塩基バランスと糖尿病発症の関係に関する分析結果です。

おそらく1980年代前半ごろに流行していた健康法ブームの1つに、「アルカリ性の食品を積極的に食べよう」というものがありました。「梅干しは酸っぱいけどアルカリ性(塩基性)だから体に良い」などと言われました。しかし実際は、血液のpHは食べた物にかかわらず一定(7.4プラスマイナス0.05)に保たれるので、摂取する食物の影響は受けないと指摘され、塩基性食品を賛美する声は弱まっていきました。
ところが近年、「摂取した食品全体の酸塩基バランスが偏ると、病気になるのではないか」という新たな仮説が提示されました。「全体のバランスが酸性に傾いた場合には、腎臓などへの負荷が高まり、血液のpHが7.35未満になる、すなわち代謝性アシドーシス(酸性血症)の状態になることがある。これが慢性化すると、糖尿病などを発症する」という考え方です。この仮説を支持する研究結果が、先に西欧で報告されていました。
しかし、東洋人は体格も食習慣も異なるため、西欧の結果をそのまま当てはめるわけにはいきません。そこで行われたのが今回の分析です。