閉経前の「適量を超える飲酒」が乳がんリスク上昇に関係
日本酒1合以上のアルコールを毎日飲む女性のリスクは、飲まない女性の2倍弱
大西淳子=医学ジャーナリスト
閉経前の飲酒頻度や飲酒量が増えるほど、乳がんリスクは上昇
飲酒頻度に基づく分類では、全体の74.7%が非飲酒者で、10.0%がまれに飲酒する女性、10.3%がときどき飲酒する女性、5.1%がほぼ毎日飲酒する女性でした。閉経前の女性と閉経後の女性に分けて同様に分類したところ、閉経前の女性ではそれぞれ、66.0%、14.5%、13.5%、5.9%、閉経後の女性では79.1%、7.8%、8.7%、4.4%でした。飲酒量に基づく層別化では、1日あたりの飲酒量が23g以上だった女性は、閉経前の女性では3.7%、閉経後の女性では2.0%でした。
登録時点と乳がんの診断の時点で、閉経前だったか閉経後だったかに基づいて参加者を層別化し、年齢、居住地域、喫煙習慣、BMI(体格指数)、初経年齢、出産数、女性ホルモン薬の使用、余暇の運動習慣などの要因を考慮して、非飲酒者を参照とした場合の乳がん発症リスクを推定しました。
その結果、登録時点で閉経前だった女性では、登録時点の飲酒量や飲酒頻度と乳がん発症の間に有意な関係が見られました。非飲酒者と比較した場合、ほぼ毎日飲酒する女性の乳がんリスクは1.37倍で、飲酒量についても、1日23g以上の飲酒者のリスクは1.74倍でした。どちらの分析でも、飲酒頻度が増えるほど、または飲酒量が増えるほど、乳がんリスクは高くなる傾向が見られました。
続いて、乳がんの診断時点で閉経前だった女性の登録時点の飲酒量と乳がんのリスクについて分析したところ、非飲酒者と比較した1日23g以上の飲酒者の乳がんリスクは1.89倍になりました。一方、飲酒頻度との関係については、統計学的に有意な関係は認められませんでしたが、飲酒頻度が高いほど、リスクが上昇する傾向は認められました。
次に、登録時点で閉経後だった女性と、診断時点で閉経後だった女性を対象として同様に分析しましたが、それらの女性においては、飲酒習慣、飲酒量と乳がんの間に有意な関係は見られませんでした。
以上の結果から、飲酒頻度の高さや飲酒量の多さは、日本の閉経前の女性の乳がんリスクの上昇に関係することが示されました。閉経後の女性にはそうした関係が見られなかったことについて、著者らは、さらに大規模な研究を行って確認する必要があるとの考えを示しています。
論文は、2021年1月26日付のInternational Journal of Cancer誌オンライン版に掲載されています(*1)。
医学ジャーナリスト
