1日の歩数が多いほど死亡リスクが低い 速さは無関係
4000歩に比べ8000歩では死亡リスクが半減、米国の研究
大西淳子=医学ジャーナリスト

「1日1万歩」を支持するデータは少なかった
長らく、「1日に1万歩歩くことが健康に良い」とされてきましたが、実はこれを支持するデータはわずかしかありませんでした。また、1日の歩数が多い人の方が死亡リスクが低いことを示した研究はいくつかありますが、高齢者や慢性疾患の患者などを対象とした研究が多く、一般的な人々における歩数と死亡リスクの関係は明らかではありませんでした。
そこで、米国立がん研究所などの研究者たちは、米国の一般的な40歳以上の人々を対象に、1日の歩数、歩行強度(1分当たりの歩数、すなわち歩く速さ)と、死亡との関係を調べることにしました。
分析の対象となったのは、2003~2006年に米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey: NHANES)に参加した、40歳以上の米国の成人のうち、最長7日間、加速度計(歩数や活動強度を測定する機器)を腰につけて行動する依頼に応えた4840人です。それらの人たちについて、2015年12月まで死亡の有無を追跡しました。
加速度計のデータが得られた4840人の平均年齢は56.8歳、54%が女性で、36%が肥満者(BMI〔肥満度の指標となる体格指数〕が30以上)でした。加速度計を装着した期間は平均5.7日間、1日当たり14.4時間で、1日当たりの平均歩数は9124歩でした。
1日当たりの歩数が少ない人に比べ、歩数が多い人には、以下の特徴がありました:年齢が若い、BMIが低い、食事の質が低い、学歴が高い、飲酒者が多い、併存疾患(糖尿病、心臓病、がんなど)の有病率が低い、運動制限のある(歩行の継続が困難または杖などが必要)人が少ない、健康状態が良くないと申告した人が少ない。喫煙率には差は見られませんでした。