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朝、30分のきつめのウォーキングがその日の血圧を下げる

座りっぱなしで肥満の高齢者を対象にした研究

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 1日に8時間を座って過ごす、肥満または肥満気味の高齢者が、朝食後に30分間、きつめのウォーキングを行うと、その日の昼間の血圧(上の血圧;収縮期血圧)が3mmHgほど下がることが分かりました。

トレッドミルで傾斜をつけた、きつめのウォーキングを30分間行った。(C)Brian Jackson-123RF

座りっぱなしの人はどのくらい運動すれば血圧が下がるのか?

 昼間のほとんどの時間を座って過ごす、エネルギー消費が少ない人、特にBMIが25以上の過体重または肥満の高齢者(*1)では、心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患のリスク上昇が懸念されます。これらの発症リスクを下げるためには、血圧を下げることが重要で、時々立ち上がって運動をすれば血圧は下がることが示唆されています。

 しかし、どのような運動を、どんなタイミングで、どの程度実施すれば血圧が効率よく下がるのかは、明確に示されていませんでした。また、運動によって血圧が下がっても、その後座り続ければ効果が消えてしまうのか、効果を持続させるにはどうすればいいのか、といった点も明らかではありませんでした。

 そこでオーストラリアBaker心臓糖尿病研究所のMichael J. Wheeler氏らは、朝食後に30分間、中~高強度のウォーキングをしてから、残る時間は座って過ごした人と、朝からずっと座っていた人の昼間の血圧の変化を調べ、比較しました。さらに、朝ウォーキングをした後、その後の座っている時間にも30分ごとに3分間の軽いウォーキングをした人と、そうでない人の比較も行いました。

*1 BMI(体格指数)=体重(kg)/〔身長(m)×身長(m)〕。世界保健機関(WHO)の国際基準では、BMI25以上30未満は過体重、30以上が肥満と定義されているが、日本肥満学会の基準では、BMI25以上になると肥満と定義される。

 実験に参加したのは、55歳以上80歳以下、BMI25以上45未満という条件を満たした67人の成人です。うち35人が女性で、平均年齢は67歳、BMIの平均は31.2で、37%が高血圧でした。

 実験では、朝8時から8時間、以下の3通りの生活のいずれかを、ランダムな順番でそれぞれ1回ずつ送るよう指示しました。

(1)座り続ける
トイレに行くとき以外は、中断なしに8時間座り続ける(参照群)
(2)運動した後、座り続ける
1時間座ってから、中~高強度のウォーキングを30分間行い、その後6時間半は、トイレに行く以外は中断なく座り続ける
(3)運動した後、座り続けるが、30分ごとに3分間の軽い運動を行う
1時間座ってから、中~高強度のウォーキングを30分間行い、その後6時間半は座って過ごすが、30分ごとに3分間、軽いウォーキングを繰り返す

 ウォーキングはトレッドミルを用いて行いました。速度は3.2km/時に設定し、朝のウォーキングでは、参加者の年齢に基づく最大心拍数の予測値の65~75%になるよう傾斜を調整しました。座っている間に行った3分間ウォーキングの際には、傾斜はつけませんでした。

 食事は朝と昼の2回提供しました。座っている間は、ラップトップPCを用いて静かに文書を読む、または仕事をするよう指示し、血圧が上昇する可能性があるテレビ視聴や、重要ではない電話などは禁止しました。血圧は、開始前と、開始1時間半後から1時間に1回の頻度で測定し、試験終了時点で最後の測定を行いました。

 実験と実験の間隔は6日以上あけ、実施前48時間は、カフェイン、アルコールの摂取と、中~高強度の運動を禁じ、実施前夜は19時から21時の間に夕食を終えるよう指示しました。

朝の30分のウォーキングで「上の血圧」が3mmHgほど低下

 実験の結果、朝8時から8時間の収縮期血圧の平均は、「座りっぱなし」の日に比べ、「運動+座りっぱなし」の日は3.4mmHg、「運動+座りっぱなし+30分ごとに軽い運動」の日は5.1mmHg、それぞれ有意に低くなっていました(表1)。

表1 朝の運動が日中の血圧に与える影響
(Wheeler MJ, et al. Hypertension. 2019 Apr;73(4):859-867.)
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 「運動+座りっぱなし」の日と「運動+座りっぱなし+30分ごとに軽い運動」の日の収縮期血圧の平均を比較すると、全体では、後者の方が1.7mmHg低くなっていました。この差は、主に女性において、軽い運動の追加による降圧効果が大きかったことに起因していました。女性の「運動+座りっぱなし+30分ごとに軽い運動」の日の収縮期血圧を「運動+座りっぱなし」の日と比較すると、差は3.2mmHgありました。一方、男性の場合は、「運動+座りっぱなし+30分ごとに軽い運動」の日と「運動+座りっぱなし」の日の収縮期血圧の平均には差はほとんど見られませんでした。

 また、下の血圧(拡張期血圧)に対する運動の影響は小さく、性別による差もほとんど見られませんでした。

 過体重または肥満で、座っている時間が長い高齢者において、朝食後30分間のきつめの運動が、その日の昼間の血圧を下げることが示されました。朝の運動に加えて、その後も30分ごとに軽い運動をした場合の利益は、男性より女性で大きいことも明らかになりました。

 論文は、Hypertension誌2019年4月号に掲載されています(*2)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。