便秘の人は循環器疾患で死亡するリスクが高い
「4日に1回」の人のリスクは「1日1回」の約1.4倍
大西淳子=医学ジャーナリスト
4日に1回以下しか排便しない人は、1日1回以上排便する人に比べて、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患で死亡する危険性が約1.4倍になることが、東北大学大学院公衆衛生学分野の本藏賢治氏らが行った研究で分かりました。
便秘は健康に悪影響を及ぼすと考えられていますが、これまで、排便頻度と循環器疾患による死亡の関係について調べた研究はありませんでした。
排便頻度が低下するにつれてリスクは上昇

対象となったのは、宮城県大崎保健所の管内に住む、国民健康保険に加入している40~79歳の住民です。
これらの人々の中から、1994年9月から12月まで行われた調査で排便の頻度に関する質問に回答しており、調査時点で循環器疾患やがんなどの病気にかかったことのなかった4万5112人を選出し、2008年3月31日まで13.3年間追跡しました。その間に2028人が循環器疾患により死亡していました。
排便頻度についての質問に対する回答に基づいて、対象となった人々を「1日1回以上」(3万6158人、男性の割合は52.2%)、「2~3日に1回」(8119人、男性は31.5%)、「4日に1回以下」(853人、男性は27.3%)の3グループに分けました。
循環器疾患による死亡との関係を調べるに当たって、結果に影響を与えそうな要因である、性別、年齢、既往症(糖尿病、高血圧)、生活習慣(飲酒、喫煙、野菜果物の摂取、歩行時間)、さらされているストレスの程度、配偶者の有無、就業状況などについても情報を得て、分析に利用しました。
1日1回以上排便するグループを参照群にすると、循環器疾患による死亡のリスクは、排便頻度が低下するにつれて上昇する傾向を示しました。循環器疾患で死亡するリスクは、2~3日に1回の群では1.21倍、4日に1回以下の群では1.39倍でした。
循環器疾患のうち、脳卒中による死亡は、2~3日に1回の群のリスクが1.29倍、4日に1回以下の群では1.90倍と、特に上昇していました。
なぜ便秘が循環器疾患のリスクを高めるのか、そのメカニズムの解明は、今後の研究を待たねばなりません。
論文は、Atherosclerosis 誌2016年3月号に掲載されています(*1)。
医学ジャーナリスト
