循環器疾患のリスクを下げる飲酒の「適量」とは?
24時間以内の心筋梗塞リスクはビール大ジョッキ1杯で最小
大西淳子=医学ジャーナリスト

「適度の飲酒は健康に良い」といわれていますが、脳梗塞や心筋梗塞といった循環器疾患のリスクに、飲酒はどのような影響を及ぼすのでしょうか。また短期的なリスクと、長期的なリスクは異なるのでしょうか。
米国Beth Israel Deaconess医療センターの研究者たちは、これまでに行われた研究のデータを分析して、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血を経験した人々の発症前24時間と1週間の飲酒量を調べ、飲酒とこれらの疾患のリスクの関係を調べました。その結果、ある条件下で、ある程度までの量のアルコールを摂取した人のリスクは、飲酒しない人よりも低くなること、しかし、大量飲酒は一貫して循環器疾患のリスクを高めることが明らかになりました。
飲酒後の循環器疾患リスクは一時的に上昇し、その後低下する?
研究者らは、「飲酒する人の循環器疾患のリスクは、飲酒をしない人と比較した場合、適度な量であっても飲酒直後には一時的に上昇し、24時間を過ぎれば、アルコールの保護的な作用が現れるのではないか」、との仮説を立てました。一方で、「大量飲酒は一貫して循環器疾患リスクの上昇をもたらす」とも予想しました。
この仮説を検証するため、著者らは、文献データベースに2015年3月12日までに登録された研究の中から、飲酒から数時間~数日間の循環器疾患(心筋梗塞、脳梗塞、脳出血)発症について調べていた23件を選出しました。対象者は計2万9457人で、多くが男女両方を含む集団を分析していました。あらゆるアルコール飲料の摂取量については、どの研究も自己申告されたデータを分析に使用していました。
心筋梗塞は1万7966人、脳梗塞は2599人、脳出血は1262人でした。これらの循環器疾患の飲酒1時間後のリスクを調べていた研究はわずかでしたが、予想通りに、非飲酒者と比較して飲酒1時間後の循環器疾患リスクは上昇していました。これらのリスクは、飲酒からの時間経過と共に徐々に低下しました。