タバコ1日1本でも、心筋梗塞や脳卒中のリスクは高い
20本が1本になってもリスクは半減程度にとどまる
大西淳子=医学ジャーナリスト
喫煙者のなかには、「禁煙は無理だが、タバコの本数を減らせばその分健康被害は減らせるだろう」と考えている人が多いのではないでしょうか。しかしこのほど発表された研究論文で、「心筋梗塞や脳卒中のリスクに関しては、タバコの本数に応じた直線的な増減は見られず、タバコの本数が1日1本であっても、リスクは1日20本吸う人の半分程度にしか減らない」という分析結果が示されました。

肺がんの場合はほぼ直線的な関係が見られるが…
これまで、肺がんと喫煙の関係を調べた研究では、1日の喫煙本数と肺がんを発症するリスクの間にほぼ直線的な関係が見られており、1日に20本喫煙する人に比べ、1本しか吸わない人のリスクは約20分の1(5%)になると報告されていました。
英University College Londonなどの研究者たちは今回、1日の喫煙量が1~5本のライトスモーカーの人々の冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)と脳卒中のリスクを、非喫煙者や喫煙本数の多いヘビースモーカーの人々と比較しようと考えました。
1946年から2015年5月までに行われた、比較的規模の大きな研究(論文数は55本)のデータを統合して分析し、喫煙経験のない人と、喫煙本数が1本/日、5本/日、20本/日の喫煙者のリスクを比較しました。
その結果、男女ともに、喫煙歴がない人々と比較すると、1日に1本しか喫煙しない人でも冠動脈疾患のリスクは高いことが分かりました。