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「座りっぱなし」の人は軽い運動を30分すると死亡リスクが低下

運動強度は低くてOK、こまめに立ち上がるだけでは不十分

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 1日中座りっぱなしの生活を送ることは、心筋梗塞、脳卒中などの心血管疾患のリスクや死亡リスクの上昇と関係することが知られています。その対策として、「定期的に立ち上がり、連続して座っている時間を短くする」、あるいは「中強度から高強度の運動をする」ことにより死亡リスクは下がるという報告がありました。

 このほど、米コロンビア大学の研究者らは、より質の高い方法を用いた研究を行い、「強度にかかわらず、運動をすれば、座り続けることによる健康被害を減らせる可能性がある」ことを示しました。

座りっぱなし解消はどんな方法でも死亡リスクを下げる?(c) Andriy Popov-123RF

立ち上がって軽い運動を行うだけでも死亡リスクは低下する?

 今回著者らは、「1日に座って過ごす時間(総座位時間)が長い人は、軽い運動を行うだけでも死亡リスクは低下するのか」また、「短時間の運動でも利益が得られるのか」といった疑問に対する答えを得たいと考えました。研究に用いたのは、運動疫学分野で近年よく用いられるようになった「ある行動を等量の別の行動に置き換えたときの影響を推定する手法(置き換えモデル)」です。

 この種の分析方法では、人の1日の活動を、強度に基づいて、睡眠時間、座っている時間(座位時間)、低強度活動時間、中高強度活動時間に分類します。それらの時間は、それぞれ別個に、健康にさまざまな影響を及ぼすと考えられています。

 著者らは、座位時間を低強度活動または中高強度活動に置き換えた場合に死亡リスクに影響があるのか、また、総座位時間が同じでも、連続する座位時間に中断を加えて、短い座位時間の集合とした場合に、死亡リスクが変化するのかを検討しようと考えました。

 対象となったのは、米国の45歳以上の人々を登録して、脳卒中リスクに人種差や地域差があるかどうかを検討した「REGARDSスタディ」に参加した人々です。それらの人々は、2009~2013年に、腰に活動量計を装着する検査を受けていました。7日間連続で、目覚めている間は加速度計を装着する生活を送るよう指示し、1日に10時間以上の装着を4日以上できていた7999人(平均年齢63.5歳、男性45.9%)を選んで、今回の分析対象にしました。

 活動量計の数値に基づき、活動時間を分単位で「座位」、「低強度活動」、「中高強度活動」に分類し、それぞれの累積時間を計算して、活動量計を10時間以上装着した日の平均を求めました。

 活動量計によると、対象者の低強度活動時間は平均188.0分/日で、中高強度活動時間は平均13.2分/日でした。装着時間の77.6%は座位で過ごしていました。

座位時間の30分を軽い運動に置き換えると死亡リスクが17%低下

 活動量計を用いた調査の終了から5.5年間(最短0.1年、最長7.6年)の追跡期間中に、647人が死亡していました。

 置き換えモデルを用いた分析では、1日の座位時間のうちの30分を、30分の低強度活動に置き換えると、死亡リスクが17%低下することが示唆されました。さらに、30分の中高強度活動に置き換えれば、リスクは35%低下することが示されました。

 次に対象者を、通常の運動時間が少ない人々と、通常の運動時間が長い人に分けて、運動への置き換えの利益を調べました。1日の活動量計装着時間に占める運動時間が、集団全体の中央値より下だった人々では、低強度活動または中高強度活動への置き換えは、死亡リスクを低下させることが示されました。一方で、運動時間が集団全体の中央値より上だった人々では、運動への置き換えの利益は見られませんでした。

 なお、今回の研究では、連続する座位時間に中断を加えるだけでは、死亡リスクに影響は認められませんでした

 以上より、座りっぱなしの生活による死亡のリスク上昇を軽減するためには、運動への置き換えが有効であること、運動強度が低くても、30分の置き換えが利益をもたらすことを示唆しました。

 論文は、American Journal of Epidemiology誌2019年3月1日号に掲載されています(*1)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。