禁煙補助療法で一番成功率の高いのはどれ?
3通りの治療を直接比較してみたら…
大西淳子=医学ジャーナリスト

禁煙を決意して医療機関の禁煙外来を受診すると、利用可能な禁煙補助療法の選択肢として、飲み薬や貼り薬などが提示されます。ところが、実はこれまで、それらの効果を直接比較した研究はありませんでした。
米ウィスコンシン大学医学部のTimothy B. Baker氏らは、貼り薬のニコチンパッチ、経口薬のバレニクリン、そしてニコチンパッチとニコチントローチの併用(米国では医師がトローチも処方します)という3通りの禁煙補助療法の有効性を直接比較する試験を行いました。その結果、「どの治療を受けても、禁煙達成率に差はない」という結果が得られたのです。
半年後に「過去1週間禁煙できていた」人の割合を比較
対象となったのは、米国の2都市に住む、18歳以上で、1日に5本以上のタバコを吸い、禁煙したいと考えているものの禁煙補助療法を受けたことがない1086人です。平均年齢は48歳、1日の平均喫煙本数は17本でした。
それらの参加者を、(1)ニコチンパッチのみ(241人)、(2)バレニクリンのみ(424人)、(3)ニコチンパッチとニコチントローチ併用(421人)のいずれかの禁煙治療に無作為に割り付けて、12週間治療を実施しました。全員に、カウンセリングセッションを6回行いました。
それぞれの治療の効果は、「禁煙開始日から26週後の時点で、過去7日間喫煙しなかったかどうかを尋ねて、イエスと答えた患者の割合(7日間禁煙率)」としました。念のため、呼気の一酸化炭素濃度を測定して、実際に禁煙できていたかどうかを確認しました(一酸化炭素濃度が5ppm以下なら禁煙できていたと判断)。
その結果、7日間禁煙率は、ニコチンパッチ群が22.8%(241人中55人)、バレニクリン群は23.6%(424人中100人)、併用群は26.8%(421人中113人)で、パッチとバレニクリン、パッチと併用、バレニクリンと併用のどの組み合わせを比較しても、統計学的には同様でした。
さらに52週時点でも7日間禁煙率を比較しましたが、やはりどの比較においても効果は同様でした。
ただし、最初の1週間のいずれかの時点で24時間以上禁煙できた患者の割合は、ニコチンパッチ群が73.0%(241人中176人)、バレニクリン群は68.2%(424人中289人)で、併用群80.5%(421人中339人)に及びませんでした。
また、バレニクリン群には、不眠、悪心、便秘、眠気、消化不良などの有害事象を訴える人が多く見られました。
この研究によって得られた結果は、禁煙補助療法は、患者本人の好みや体質(皮膚がかぶれやすいかどうかや、有害事象の現れ方の強弱など)に合わせて選択すれば良いことを示唆しました。
論文は、米国医師会が発行するJAMA(the Journal of the American Medical Association)誌2016年1月26日号に掲載されています。
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