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便秘の人は死亡や心血管疾患のリスクが高い

便秘のない人に比べて約10~20%上昇、米国の中高年男性を対象とした調査

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 便秘がある人は、便秘のない人に比べて、死亡のリスクや心血管疾患(心筋梗塞、脳卒中などの心臓・血管系の病気)の発症リスクが高いことが、米国の退役軍人300万人以上を対象に行われた研究で示されました。
便秘を放置すると心血管系にも悪影響?(c)Manuel Faba Ortega-123RF

医師から便秘と診断されていた人とそうでない人を比較

 便秘に悩む人は多いものの、自然に改善することも多く、便秘自体は深刻な病気とは考えられていません。ただし、慢性化すると生活の質が低下し、社会参加が妨げられることもあります。

 これまでにも、慢性の便秘と死亡や心血管疾患の関係を調べた研究はいくつか行われていましたが、一貫した結果は得られていませんでした。

 今回、米国テネシー大学ヘルスサイエンスセンターの住田圭一氏らは、米国の退役軍人335万9653人(平均年齢59.8歳、93.2%が男性)の情報を分析し、便秘と死亡や心血管疾患の関係を調べました。

 便秘の定義は、「医師から、30日以上の便秘薬の処方を、60~365日の間隔をおいて2回以上受けていた場合」、または、「60日を超える間隔をおいて、2回以上便秘と診断されていた場合」としました。

 追跡開始時点で、7.1%(23万7855人)がこの定義を満たしていました。このうち、便秘薬を1種類使用していた患者は3.8%(12万8640人)、2種類以上使用していた患者は2.5%(8万3848人)でした。便秘と診断されていたものの便秘薬を使用していなかった患者は0.8%(2万5367人)でした。

 対象者を6.7年(中央値)追跡し、あらゆる原因による死亡、心臓の冠動脈が狭くなって起こる冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症)、虚血性脳卒中(以下、脳梗塞)(*1)の発生の有無を調べました。追跡期間中に59万7780人が死亡しており、6万8076人が冠動脈疾患を、6万3371人が脳梗塞を経験していました。

 性別や年齢、抱えている病気、処方薬の使用、社会的な地位や経済状況など、分析結果に影響を及ぼす可能性のある要因を考慮した上で、便秘患者と便秘ではない人々を比較したところ、便秘患者では、便秘のない人に比べて、あらゆる原因による死亡、冠動脈疾患、脳梗塞の全てにおいてリスクの上昇が見られました(表1)。死亡リスクは12%、冠動脈疾患の発症リスクは11%、脳梗塞の発症リスクは19%上昇していました。

冠動脈疾患:心筋梗塞や狭心症(データ出典:Atherosclerosis. 2018 Dec 23;281:114-120.)
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 1種類の便秘薬を使用していた患者にも、2種類以上の便秘薬を使用していた患者にもリスク上昇が認められました。処方されている便秘薬の数が増えるほどリスクが高くなる傾向は見られませんでした。

 研究者たちは、「なぜ便秘患者にこうしたリスク上昇が見られるのかを調べるとともに、便秘に対する治療、たとえば運動、食事療法、プロバイオティクス(*2)の摂取や便秘薬の使用などが死亡や循環器疾患を減らせるかどうかを検討する必要がある」と述べています。

 論文は、2018年12月23日付のAtherosclerosis誌電子版に掲載されています(*3)。

*1 虚血性脳卒中:脳の動脈が詰まって脳に十分な血液と酸素が行き渡らなくなり、組織の一部が壊死する病気。脳梗塞。脳や首の大きな動脈にアテローム硬化が生じて血管が狭くなり、そこに血栓が付着して生じるアテローム血栓性脳梗塞、心臓にできた血栓が血流によって脳や首の血管へ運ばれて詰まる心原性脳塞栓症、脳内の細い動脈が閉塞するラクナ梗塞などが含まれる。
*2 プロバイオティクス:腸内細菌のバランスを改善することにより、体に良い作用をもたらす生きた微生物のこと。乳酸菌やビフィズス菌などが知られている。
*3 Sumida K, et al. Atherosclerosis. 2018 Dec 23;281:114-120. doi: 10.1016/j.atherosclerosis.2018.12.021.
大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。