犬を飼う人の死亡リスクは低い、特に1人暮らしの中高年で顕著
飼い主の社会的な孤立を防ぎ、癒やしを与え、身体活動量を増やす
大西淳子=医学ジャーナリスト
対象世帯を1人暮らしと複数人の世帯に分けて分析したところ、犬を飼うことによって得られる利益は、単身者のほうが大きいことが明らかになりました。犬を飼っていなかった人と比較すると、1人暮らしで犬を飼っている人の総死亡のリスクは33%低く、循環器疾患死亡のリスクは36%低くなっていました。複数人からなる世帯で犬を飼っている人の場合、それぞれ11%、15%低下していました。
急性心筋梗塞、心不全、虚血性脳卒中、出血性脳卒中を合わせて、追跡期間中にいずれかを経験するリスク、すなわち循環器疾患を発症するリスクを比較したところ、犬を飼っていた単身者のリスクは、犬を飼っていなかった単身者に比べ8%低い一方で、複数人からなる世帯の人には、そうしたリスク低下は見られませんでした。
今回の結果について、著者らは、「循環器疾患やそれらによる死亡、総死亡のリスクを高めることが示唆されている精神的なストレス(社会的隔離や、うつ、孤独など)が、犬を飼うことにより減る可能性があること、犬と過ごすことによって、身体活動量が増え、屋外で過ごす時間も増加することが、死亡リスク低減をもたらすのではないか」との考えを示しています。なお、先に行われた、犬の飼い主を対象とする研究では、1人暮らしの人のほうが、家族やパートナーと暮らす人よりも、1日のうちで犬と歩く回数(頻度)が高いことが示されています(*1)。
著者らは、「今回得られた結果は、犬を飼うことと死亡リスク低下の関係を示した、これまでで最も強力なエビデンスだ」と述べています。
論文は、2017年11月17日付のScientific Reports誌電子版に掲載されています(*2)。
*2 Mubanga M, et al. Sci Rep. 2017 Nov 17;7(1):15821. doi: 10.1038/s41598-017-16118-6.
医学ジャーナリスト

