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週1回の筋トレでも心筋梗塞・脳卒中の予防が期待できる

有酸素運動の有無にかかわらず効果的

 大西淳子=医学ジャーナリスト

 1週間に1~2回、計60分までのレジスタンス運動(筋力トレーニング)を行うと、心筋梗塞や脳卒中の発症リスクや死亡のリスクが下がる可能性があることが、米国で行われた研究で明らかになりました。

将来の寝たきり予防などに役立つ筋トレ。実は心筋梗塞や脳卒中の予防にも効果がありそう。(c)undrey-123RF

筋トレでも心筋梗塞や脳卒中のリスクは下がる?

 心筋梗塞脳卒中などの、心臓や血管に関わる病気(心血管疾患)は、先進国における主要な死亡原因になっており、リスクを低減するための有効な対策が求められています。これまで、有酸素運動については、心臓や血管に良い影響をもたらすことが分かっていましたが、レジスタンス運動(筋力トレーニング)については一貫した結果は得られていませんでした。

 そこで、中国華東師範大学のYanghui Liu氏らは、心血管疾患と死亡のリスクにレジスタンス運動が及ぼす影響を、有酸素運動とは切り離して分析することにしました。

レジスタンス運動
筋肉を増やすことを目的として、例えば大腿部や腹筋など、目指す筋肉に負荷(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動。筋力トレーニングとも呼ばれる。
有酸素運動
長時間続けて行うことが可能な軽度~中等度の運動。体内に酸素を取り入れて、エネルギーを消費させる。メタボリックシンドローム(メタボ)の改善や減量を目的とした人に適しており、ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどが代表例。

 Liu氏らは、米国テキサス州Dallasのクリニックでボランティアを募集しました。登録された人々のほとんどが白人で、学歴は高く(80%超が大学卒業以上)、社会経済的地位は中~高レベルでした。これらの人々は、定期的に、心血管疾患の予防を目的とする健康診断と生活習慣(運動、栄養、ストレス管理など)に関するカウンセリングを受けました。

 1987年から2006年までに2回以上診察を受けており、登録時点で、心筋梗塞、脳卒中、がんの病歴がなかった1万2591人(18~89歳、平均年齢47歳、21%が女性)を分析対象としました。

 有酸素運動については、米国のガイドラインに従ったレベル(500MET-分/週以上、具体的には、中強度の有酸素運動を週に150分、または高強度の有酸素運動を週に75分以上)を実践しているかどうかを尋ねました(*1)。

 レジスタンス運動については、フリーウェイトトレーニング(ダンベルやバーベルなど器具を使ったトレーニング)、またはマシンを使ったウェイトトレーニングを1週間に何回、1回ごとに何分くらい行っているかを尋ねて、1週間の総運動時間を計算しました。レジスタンス運動の頻度に基づいて、「週に1回」、「週に2回」、「週に3回」、「週に4回以上」に分類し、さらに、1週間の総運動時間に基づいて、「0分」、「1~59分」、「60~119分」、「120分以上」に分けました。

*1  MET(またはMETs):身体活動の「強度」を表す単位で、安静時(座って安静にしている状態)を1METとし、それぞれの身体活動がその何倍の強度に相当するかを示す。普通歩行は3MET、ジョギングは7METに相当する。5METの運動を100分行うと500MET-分となる。

 平均5.4年の追跡で、心血管疾患の発症または心血管疾患による死亡(これらをまとめて「心血管イベント」)は、205人に発生しました。うち127人は追跡終了まで生存していました。あらゆる死因による死亡(総死亡)は、平均10.5年の追跡期間中に276人に発生していました。

 登録時の調査では、全体の27%(3438人)がレジスタンス運動を実施していました。レジスタンス運動を全く行っていなかった群と比較すると、レジスタンス運動を行っている群には男性が多く、年齢は若く、非喫煙者が多く、有酸素運動の実施者が多く、BMI(肥満度を表す体格指数)は低く、さらに、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、親が心血管疾患を経験している人の割合も少なくなっていました。

 レジスタンス運動の頻度または実施時間に基づく各分類群を対象に、レジスタンス運動の実施が「心血管イベント」、「心血管疾患による死亡」、「総死亡」に及ぼす影響を検討しました。結果に影響を与える可能性のある要因(有酸素運動実施の有無も含む)を考慮して分析したところ、統計学的に意味のあるリスク減少が見られたのは、「週に1~2回程度、計60分未満(1~59分)のレジスタンス運動」でした(表1)。各評価項目で、35~70%のリスク減少が認められました。

(Liu Y, et al. Med Sci Sports Exerc. 2018 Oct 29.)
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 横軸をレジスタンス運動の頻度、縦軸をリスクの大きさとしてグラフを描くと、どの評価項目についてもU字型のカーブが現れ、週に2回程度レジスタンス運動を行っていた人のリスクが最も低い傾向が見られました。

有酸素運動の有無にかかわらず筋トレは効果的

 Liu氏らは、ガイドラインが推奨しているレベルの有酸素運動を実施している人々とそうでない人々を分けて検討しましたが、上記の「心血管イベント」と「心血管疾患による死亡」のリスク低下は、有酸素運動の実施の有無にかかわらず認められました。一方で、「総死亡」については、ガイドラインが指示するレベルの有酸素運動と並行してレジスタンス運動を行っている人についてのみ、リスク減少が認められました。

 たとえ週1回でも、または、1週間に1時間未満でも、レジスタンス運動を行うことは、心筋梗塞や脳卒中の予防に役立ちそうです。

 論文は、2018年10月29日付のMedicine & Science in Sports & Exercise誌電子版に掲載されています(*2)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。