EPA、DHAをとりすぎると心房細動リスクが上昇する恐れ
オメガ3脂肪酸は動脈硬化を減らすが心房細動を増やす?
大西淳子=医学ジャーナリスト
個々の研究が報告していた結果には、大きなばらつき(異質性)が見られましたが、投与量に基づいて2群に層別化し、分析したところ、高用量群と低用量群のいずれにおいても、ばらつきの程度は大きく減少しました。
1日1g超の高用量群では、介入群の心房細動のリスクは対照群の1.49倍、1日1g以下の低用量群では1.12倍で、いずれも統計学的に有意なリスク上昇が認められました。さらに分析したところ、オメガ3脂肪酸の投与量が1日1gから4gまでの範囲では、心房細動のリスクは用量依存的に上昇し、1g増えるごとに1.11倍になることが示されました。
得られた結果は、魚介類由来のオメガ3脂肪酸の摂取が心房細動リスクの上昇に関係すること、リスクは食事以外から1日1gを超えて摂取している人において大きいことを示しました。研究者たちは、「オメガ3脂肪酸のアテローム性動脈硬化症リスクの低減効果もまた、用量依存的であることから、オメガ3脂肪酸の摂取がその人にもたらす利益とリスクのバランスを十分に検討する必要がある」と述べています。
日本人のオメガ3脂肪酸の摂取目安量は1日2g程度
日本でも、魚介類由来のEPAとDHAを含む多様なサプリメントが市販されており、気軽に利用できますが、含有量はさまざまです。今回の研究は、通常の食事に加えてそうしたサプリメントを長期にわたって使用することが、一部の人には有害になる可能性を示したと言えます。
なお、魚介由来のDHA、EPAのほかに、エゴマ油などに多く含まれるα-リノレン酸もまた、オメガ3脂肪酸の一種です。そして、日本人が最も多く摂取しているオメガ3脂肪酸がα-リノレン酸です。オメガ3脂肪酸は体内で合成できないため、欠乏すれば皮膚炎などが生じますが、一般の健康な日本人には、オメガ3脂肪酸の欠乏が原因と考えられる症状は見られないため、適切な量を摂取していると考えられています。
そこで厚生労働省は、実際に日本人が摂取しているオメガ3脂肪酸(n-3系脂肪酸)全体の量の中央値を、摂取の目安量として提示しています(表1)。これは、日本人の多くが、健康を維持するために必要な量を食事から摂取できていることを意味します。
なお、中性脂肪の値が高く、治療が必要と医師が判断した場合には、脂質異常症治療薬としてオメガ3脂肪酸を含む「ロトリガ」や「エパデール」といった薬が処方されることがあります。
医学ジャーナリスト
