青物野菜をたくさん摂ると緑内障になりにくい
食事を介した硝酸塩の摂取量がポイント
大西淳子=医学ジャーナリスト

40歳を超えると緑内障の患者が増え始めます。緑内障は、本人が症状に気づいたときには、かなり進行していることが多い病気で、現時点では進行を遅らせる治療しかありません。では、なんとか予防する手段はないのでしょうか?
これに関して、米国ハーバード大学医学部のJae H. Kang氏らが行った興味深い研究結果が、米国の医学雑誌「JAMA Ophthalmology」誌の電子版に掲載されました(2016年1月14日付)。Kang氏らは、40歳以上の人々を25年余り追跡し、食事を介した硝酸塩の摂取量が多いほど、緑内障を発症しにくいということを明らかにしました。特に有効だったのは、青物野菜の摂取でした。
体内で一酸化窒素になる硝酸塩と緑内障の関係に注目し、25年追跡
近年、緑内障には目の血流の低下が関係することを示すデータが蓄積され、血管拡張作用を持つ一酸化窒素が、緑内障治療に役立つのではないかと考えられるようになりました。
Kang氏らは、食事を通じて摂取した硝酸塩が、体内で一酸化窒素になることに注目し、緑内障ではない人々の硝酸塩摂取量と、その後の緑内障発症の関係を調べることにしました。硝酸塩を多く含むのは青物野菜で、食事を介した硝酸塩摂取の約8割が青物野菜に由来することから、特に野菜の摂取量と緑内障の関係を詳しく調べました。
対象にしたのは、米国の女性看護師を長年追跡している研究と、米国の男性医師を長年追跡している研究に参加した人々です。Kang氏らは、それらの医療従事者の中から、「40歳以上で、当初は緑内障ではなく、それ以降に眼科健診を受けていた人々」を選出。条件を満たした、女性6万3893人の1984年から2012年までのデータと、男性4万1094人の1986年から2012年までのデータを入手しました。
これらの人々は、定期的に食物摂取頻度調査を受けていました。そのデータに基づいて、個人の硝酸塩摂取量を推定しました。野菜類は、青物野菜、アブラナ科の野菜、根菜、トマト(生、加熱、ジュース)、セロリに分類しました。注目された青物野菜に分類されたのは、アイスバーグレタス(日本でもベビーリーフに含まれていることがある、グリーンが鮮やかで苦みのある葉物野菜)、ロメインレタス(結球せず、グリーンが鮮やか。生だけでなく加熱調理にも使われる)、ケール、からし菜、フダンソウ、ほうれん草でした。
さて、25年を超える追跡期間中に、どのくらいの人が緑内障を発症したのでしょうか。