食欲がない、胃がもたれる、みぞおちが痛い…そんなあなたは機能性ディスペプシアかも
無治療でも半分は自然に良くなる
大西淳子=医学ジャーナリスト

食欲がない。食べ始めてもすぐに満腹感が出てしまう。胃が痛い。もたれる―。そんな胃の不調を抱えている人はいませんか?
食欲不振に陥り、食べる量が減ると、少しずつ痩せてくるので、悪い病気ではないかと不安は高まります。そこで医師の元を訪れて原因が判明し、治療を受けられれば良いのですが、一部の患者はどんな検査を受けても「異常なし」と判定されます。これが「機能性ディスペプシア」です。
機能性ディスペプシアは命にかかわる病気ではない
機能性ディスペプシアは、胃の組織に異常(炎症、損傷など)がないにもかかわらず、正常に機能しない(胃の不調を感じる)状態をいいます。検査の結果、「異常はない」と言われても不快な症状は続くので、患者の多くはドクター・ショッピングを繰り返す可能性があります。
まさに自分のことだ、と思った方に最初にお伝えしたいのは、機能性ディスペプシアは余命を短縮しないということです。一方で、欠勤が増える、生産性が低下する、それらにより収入が減少する、医療費を増やす―といった悪影響を及ぼす可能性があります。
前置きが長くなりましたが、今回は、オーストラリアNewcastle大学の研究チームが、米国の医学雑誌「the New England Journal of Medicine」(NEJM)2015年11月5日号に発表した機能性ディスペプシアに関する論説の内容を紹介します。以下を読んで、この病気について正しく理解すれば、症状は早く治まるかも知れません。
機能性ディスペプシアは消化不良の原因として最も多い
機能性ディスペプシアは、消化不良の原因として最も多く、人口の20人に1人から10人に1人程度が機能性ディスペプシアの患者と言われています。
消化不良を訴えて受診した人々に内視鏡検査を行っても、潰瘍が見つかる患者は10%未満で、胃食道にがんが見つかる患者は1%未満です。ヘリコバクター・ピロリ菌の感染がなく、がんを疑わせる症状もない、消化不良の患者の多くが、機能性ディスペプシアと診断されます。
機能性ディスペプシアは、世界的には、「胃のあたりの痛みやチリチリと焼けるような感覚がある、早期に満腹感が現れて通常の量の食事を取れない、食事中または食後に腹部に膨満感がある、といった症状が週に1回以上発生し、少なくとも6カ月以上にわたってそうした状態が継続しているのに、検査しても異常は見つからない患者」と定義されています。