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話題の論文 拾い読み!

若いうちからの腎機能低下は脳にも影響

認知機能の低下が早まる可能性、20~40代男女を長期間追跡した観察研究

 大西淳子=医学ジャーナリスト

腎機能の低下を経験していた人の認知機能低下リスクは高い

 今回の分析には、条件を満たした2604人(26~44歳、平均年齢35歳、54%が女性、45%が黒人)のデータを用いました。国際腎臓病ガイドライン機構のKDIGO(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)ガイドラインに基づき、これらの人々を「腎機能が維持されており、末期腎不全になるリスクは低い集団」、「腎機能がやや低下していて、末期腎不全になるリスクが中程度の集団」、「腎機能が低下し、末期腎不全リスクが高まっている集団」、「腎機能が大きく低下し、末期腎不全リスクが非常に高くなっている集団」の4つに分類しました(図1)。

図1 KDIGOガイドラインに基づく末期腎不全リスクのレベル
[画像のクリックで拡大表示]

 登録から10年後の時点では、末期腎不全低リスクの人が2508人(96.3%)、リスクが中程度だった人が89人(3.4%)、高リスクの人が7人(0.2%)で、リスクが非常に高いと見なされた人はいませんでした。登録から30年後には、低リスクが2347人(90.1%)、中程度は196人(7.5%)、高リスクは37人(1.4%)で、24人(0.9%)は末期腎不全リスクが非常に高いと見なされました。

 20年間に行われた複数回の腎機能評価の結果から、2604人を、(1)一貫して低リスクのグループ(2177人)、(2)末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が1回あったグループ(240人)、(3)末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が2回以上あったグループ(187人)に分類しました。

 年齢、性別、人種、学歴、BMI、総コレステロール値、喫煙習慣、高血圧、糖尿病などの要因を考慮して分析したところ、腎機能の低下を経験していた人の認知機能低下のリスクは、そうではない人に比べ高いことが明らかになりました。「末期腎不全リスクが中程度以上の腎機能低下が認められた回数が多いこと」と、認知機能の低下(実行機能、精神運動速度、複合認知機能など)の間には有意な関係が見られました。

 さらに著者らは、腎機能の長期的な変化の傾向に応じて、参加者を(1)腎機能は終始安定(全ての受診時に低リスク集団に分類された)、(2)腎機能はいったん低下したがその後に改善(末期腎不全リスクが中程度以上と見なされた測定回が1回以上あったがその後回復)、(3)腎機能が持続的に低下、の3集団に分類して検討しました。その結果、(1)の腎機能が安定していた患者、および、(2)のいったん悪化した後に改善した人と比べ、(3)の腎機能が低下した状態が続いていた人では、認知機能(DSSTとMoCAのスコアと、複合認知機能)が有意に低下していました。

 今回得られた結果は、若いうちから腎機能に目を向け、低下を防ぐことによって、その後の認知機能の低下を回避できる可能性を示すものといえます。

 論文は、2020年9月2日付のNeurology誌電子版に掲載されています(*1)。

大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
大西淳子(おおにしじゅんこ) 筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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