発酵食品をとるほど腸内フローラが多様化する
全身性の炎症が抑制される可能性、10週間の介入試験の結果
大西淳子=医学ジャーナリスト
食物繊維群では、腸内フローラの多様性は変化してはいませんでしたが、腸内細菌の増加を示唆するデータが得られました。これは繊維の消化に対応するための変化と考えられ、実際にグリカンを分解する糖質関連酵素の分泌が増えていました。免疫系への影響は一貫していませんでした。
これまでの報告にあったような、腸内フローラへの好ましい影響が見られなかったことについて、研究者たちは、「介入期間が短かったのではないか」との考えを示しています。
一方の発酵食品群では、維持期間の終わりにかけて、発酵食品の摂取量が増えるにつれて、腸内フローラの多様性が拡大していました。摂取量の増加と多様性の拡大の関係が最も強力だったのは、ヨーグルトの摂取でした。また、追跡期間中に、血液中のサイトカインやケモカイン、その他の炎症性たんぱく質が減少していました。減少していたサイトカインの1つであるIL-6は、慢性炎症が認められる関節リウマチや2型糖尿病、また慢性ストレスなどを有する患者で高値となることが知られています。
以上の結果は、先進国の住民に広がっている、腸内フローラの多様性の縮小と慢性炎症傾向を改善するために、発酵食品の積極的な摂取が役立つ可能性を示しました。
論文は、Cell誌2021年8月5日号に掲載されています(*3)。
医学ジャーナリスト
