発酵食品をとるほど腸内フローラが多様化する
全身性の炎症が抑制される可能性、10週間の介入試験の結果
大西淳子=医学ジャーナリスト
健康な成人39人を食物繊維群または発酵食品群に割り付け
健康な成人39人を、「植物性の食物繊維が豊富な食事(食物繊維群)」または「発酵食品が豊富な食事(発酵食品群)」にランダムに割り付けました。食物繊維群には、1日あたりの食物繊維摂取量をそれまでより20g以上増やすように指示し、発酵食品群には、発酵食品の1日あたりの摂取量をそれまでより6皿以上増やすように指示しました。
食物繊維または発酵食品は、いきなり指示された量を摂取するのではなく、目標レベルまで増やすための期間として4週間の増量期間を設けました。その後、指示された量の摂取を継続し、できればさらなる増量を目指す6週間(維持期間)、さらに、本人が望む量だけ摂取する4週間(選択期間)を設けました。隔週で便と血液の採取を行い、腸内フローラの組成や機能の分析と免疫系に関する分析を行いました。
試験に参加した人の中から、試験期間中に抗菌薬の処方を受けた患者などを除外し、36人(各群18人)を分析対象としました。平均年齢は51歳で、女性が73%、白人が81%で、BMI(体格指数)の平均は25(米国では30以上が肥満)でした。割り付け時点では、両群の腸内フローラの多様性に差はありませんでした。
食物繊維群では、1日あたりの食物繊維摂取量の平均は、介入前が21.5gで、維持期間の終わりには45.1gに増えていました。発酵食品群では、介入前の0.4皿から6.3皿に増えていました。食物繊維群では、摂取エネルギーがやや増加し、鉄やマグネシウム、カリウム、ビタミンC、カルシウムの摂取が増え、動物性たんぱく質と塩分の摂取量は減少していました。発酵食品群では、ヨーグルトやキムチのような発酵野菜、発酵チーズ、発酵ドリンクなどの摂取が増えるとともに、動物性たんぱく質の摂取も増えていましたが、塩分摂取量に変化は見られませんでした。なお、食物繊維群に発酵食品の摂取増加は見られず、発酵食品群には食物繊維の摂取増加は見られませんでした。
発酵食品の摂取量が増えるにつれて、腸内フローラの多様性は拡大
まず、炎症反応の指標である「サイトカイン反応スコア(CRS)」を評価しました。CRSは、15種類のサイトカイン(*2)の反応性を評価した結果をスコア化したもので、スコアが高いほど炎症反応は低く、免疫系の反応性は高い、すなわち好ましい状態にあることを意味します。残念ながら、食事介入による両群のCRSの変化に、有意差は見られませんでした。
また、両群ともに、インスリン、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、血圧、腹囲には変化は見られず、感じていたストレスレベルや健康状態、疲労感、認知機能などにも差は認められませんでした。
しかし、以下のような評価項目には差が見られました。