たんぱく尿の出現に「朝食抜き」と「遅い夕食」が影響か
約3年半の追跡中に、たんぱく尿のリスクが12~15%上昇
大西淳子=医学ジャーナリスト
「朝食を抜く」あるいは「遅い時間に夕食をとる」という食習慣が、たんぱく尿の出現リスクを高める可能性があることが、日本人を対象とした研究で明らかになりました。

不健康な食習慣も腎臓の病気の原因になり得る?
職場や自治体が実施する健康診断では、ほぼ必ず尿検査が行われます。結果の中にある尿たんぱくが陽性(たんぱく尿)だと、腎臓の病気が疑われます。腎臓病は無症状である場合が多いため、たんぱく尿は腎臓の病気を見つけ出すための重要なサインになります。たんぱく尿が続けば、慢性腎臓病と診断される可能性が高まります。
慢性腎臓病は、進行して末期腎不全になると透析治療や腎移植が必要になるほか、総死亡(あらゆる原因による死亡)や心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)による死亡のリスク上昇にも関係することが分かっています。慢性腎臓病の主な原因は、糖尿病、高血圧、肥満ですが、それらの発生には不健康な食習慣が関係すると考えられます。例えば、日常的な朝食抜きや遅い夕食は、肥満リスクを高めることが示唆されています。
これまでに行われた、食事と慢性腎臓病の関係を評価した研究の多くは、特定の栄養素(塩分など)の摂取を控える、栄養素の摂取バランスを変更する、といった介入が、慢性腎臓病の進行に及ぼす影響に注目していました。しかし近年、食事をとる時間や食べ方も慢性腎臓病の発症に影響するのではないかと考えられるようになりました。
食習慣は本人の努力次第で変えられることから、不健康な食習慣がどのような病気を引き起こすのかを明らかにすることは重要です。そこで金沢大学などの研究者たちは、慢性腎臓病の発症の手前で出現するたんぱく尿と不健康な食習慣の関係を調べることにしました。
腎機能に問題のない約2万7000人を3年超追跡
対象となったのは、石川県金沢市で、1998~2014年に年1回の健康診断を受けていた40歳以上の一般人です。
年1回の健康診断の際に、質問票を用いて、不健康な食習慣、飲酒習慣、喫煙習慣、降圧薬の使用、血糖降下薬の使用に関する情報を収集し、BMI(*1)とウエスト/ヒップ比(*2)を測定しました。不健康な食習慣に関する調査では、遅い夕食(週に3回以上、夕食が就寝前2時間以内になる)、夕食後の間食(週に3回以上)、朝食抜き(週に3回以上)について、「はい」「いいえ」から回答を選択し、早食いについては、同年代の人と比較して「早い」「同じ」「遅い」から選択するよう依頼しました。
健診の時点で腎機能が低下していた人や、尿たんぱくが1+(30mg/dLに相当)以上だった人、食習慣などの分析に必要な情報がそろっていなかった人などは除外し、健康診断後1年を超えて追跡できた2万6764人(平均年齢68歳、44%が男性、平均BMIは22.8、平均追跡期間3.4年)を分析対象にしました。
不健康な食習慣の中で最も多かったのは早食い(29%)で、続いて、遅い夕食(19%)、夕食後の間食(16%)、朝食抜き(9%)となりました。
*2 ウエスト/ヒップ比=ウエスト周囲径(cm)÷ヒップ周囲径(cm) 数値が大きいと生活習慣病のリスクの高い腹部肥満(内臓脂肪型肥満)と判断される。