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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

下手なトレーニングが逆効果になるワケ

第41回 トレーニング動作の学習効果の注意点

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

下手なトレーニングをすればパフォーマンスが落ちる危険性も

 もう一歩先に考えを進めてみると、スプリンターはレッグエクステンションのトレーニングをしないほうがいい、ということになります。極端な意見ではありますが、レッグエクステンションを一生懸命に行い、学習効果によってその動作がうまくなってしまうと、大腿四頭筋とハムストリングスを共収縮させるという筋肉の使い方が逆に下手になってしまう可能性がある。結果的に、スプリントパフォーマンスにとってマイナスになるかもしれません。

 膝の伸展筋力が明らかに足りないという弱点がある場合、補強のためにレッグエクステンションを集中的に行うのはいいと思います。しかし、そうした課題がないのに、スクワットは腰に負担がかかるからといった理由でレッグエクステンションばかり行っていると、目的とする筋力アップには成功しても、スプリント能力は落ちてしまう危険性があります。

 これはスプリンターに限らず、あらゆるスポーツ選手にとって注意すべき点です。昔から、筋トレをして「身体が重くなってしまった」とか「関節の動きが悪くなってしまった」とかということがいわれてきましたが、これは全くの誤解。スポーツ動作のトレーニングは、その動作のための筋肉の使い方を学ぶことが大切であって、それを考えずに見よう見まねでトレーニングをすると、マイナスになることもあり得るのです。

 筋肉の使い方を理解して、正しいトレーニングをすれば、筋力が増した分、パフォーマンスも当然上がります。もし筋トレをした後にパフォーマンスが落ちたのだとしたら、それは下手な筋トレをしたからだと考えたほうがいいでしょう。

レッグエクステンションばかり行っていると、
目的とする筋力アップには成功しても、
スプリント能力は落ちてしまう危険性がある。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
ベースボール・マガジン社 商品検索&販売サイト


この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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