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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

「身の危険」を感じたとき瞬時に反応するメカニズム

第18回 筋肉を動かす2つの指令伝達経路

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

緊急時に働く「反射」

 大脳の運動野(運動中枢)から発した指令が、運動神経細胞を経由して、最終的に複数の筋線維に届けられる。日常生活やスポーツ動作ではそのような仕組みが一瞬にして働いているわけですが、ここまで説明したのはオーソドックスな指令伝達の経路。脊髄の中にはもう1つ、大脳の運動野から下りてくる神経とは別に、筋線維を活動させる経路が存在しています。

膝頭の下を叩くと足が前方に跳ね上がる「膝蓋腱反射」も伸張反射の1つ(©Simone van den Berg-123rf)

 筋肉の中には、筋肉の長さ変化を感受する筋紡錘という受容器があります。その筋紡錘から脊髄の中の運動神経細胞に直接信号が戻ってくる経路があり、筋肉が引っ張られると、その信号によって自動的に筋肉が活動するという仕組みがあります。これが前述した「反射」の1つで、「伸張反射」と呼ばれるものです。

 反射は脳とはほとんど関係なく、筋肉(筋紡錘)が引っ張られれば収縮が起きるという非常に短いループで反応が起こるので、結果として動作が早くなります。身の危険を感じた時に瞬時に行動できるように、生物にはこうした仕組みが備わっているのでしょう。ただし、大脳からの指令によって、こうした反射の「感度」が変わることもあります。

 筋肉を伸ばされたときだけでなく、熱いものを触ったとき、痛みを感じたときなども同様に反射が起こります。「熱い!」と脳で考えてから腕を引っ込めるのでは遅すぎますし、とがったものに触れて、「これは痛みを感じる物体だ」と思ってから動いたのでは大ケガをしてしまう危険性があります。

 そうならないように、強い刺激が末梢神経に伝わったときには、何も考えなくとも手足を引っ込めるように身体はできています。

 このような生物の安全を保つ役割を担っている反射も、神経と筋線維による運動単位によって行われているのです。

筋肉の中には、運動単位がたくさんあり、
それぞれが神経からの指令を受け取ることによって
いろいろな動きが可能になる。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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