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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

トレーニングによる成果と筋肉量が一致しない不思議

第40回 トレーニング動作の学習効果

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

 では、なぜ効果が上がったように感じるのかというと、ベンチプレスならベンチプレスを、スクワットならスクワットを行うのが上手になったからです。初期に感じるトレーニング効果の最大の要因は「学習効果」。別な言葉では「動作特異性」といいます。シンプルな動作とはいえ身体を使った運動なので、効率よく上手にできるようになれば、持ち上げられる重さは早い段階で増えてきます。

 例えば、実験室の中でレッグエクステンションの最大筋力を測ってみます。その後、あえてレッグエクステンションではなく、スクワットだけをトレーニングします。3週間ほどたった後、スクワットの1RMが10kgくらい伸びたとします。そこでレッグエクステンションの最大筋力をもう一度測ってみると、筋力はほとんど伸びていない、ということが起こります。

 レッグエクステンションを行うときに使う大腿四頭筋はスクワットでも鍛えられるはずなのですが、スクワットの記録が伸びても大腿四頭筋そのものはそれほど強くなっていないということになります。これは筋肉が太くなったわけではなく、スクワットをするときに全身の筋力を協調して使う能力などが、学習効果によって伸びただけなのです。

筋力増加の要因は3つ

 レッグエクステンションを強くしたいのであれば、レッグエクステンションのトレーニングをするのが一番いい。スクワットが強くなっても、レッグエクステンションが伸びるとは限らない。つまり、トレーニングによるパフォーマンスの増加は、そのトレーニング動作を向上させるものである、という観点が大切です

 とはいえ、実際は3カ月間しっかりトレーニングを行えば、筋肉が10%前後太くなるということは起こる可能性があります。これは動作特異性の問題ではなく、本当に筋肉が成長したという状態です。例えばレッグエクステンションでトレーニングをして、大腿四頭筋が10%太くなったとすると、レッグエクステンションのパフォーマンスそのものは通常20%ほど良くなります

 余分に増えた10%は何かというと、1つは動作特異性、もう1つは神経系の抑制の低減(頭でブレーキをかける作用が小さくなり、フルに筋肉を使えるようになった)です。同じ動作で比較した場合、筋力増加には、(1)筋肉が太くなって強くなること、(2)動作が上手になること、(3)神経系の抑制が低減されること、という3つの要素が含まれているということになるわけです。

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