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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

体重を落とすためには「よく動く」ことが有利なワケ

第17回 筋肉に備わる「筋収縮」と「熱発生」の関係

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

 力を維持しながらジッとしているというのは、生物が生きていく上ではかなり頻繁に行われている行動です。ヒトがじっと立っているときも、姿勢を維持するための筋肉活動は持続されています。その状態で筋肉が熱をどんどん出してしまうと、荷物を持って立っているだけで汗だくになってしまうということが起こります。そうならないように、ある状態をキープしているときは、エネルギーを極力使わずに力を出し続けられるように、筋肉は設計されているのです。

 前ページでの図には、その対極として直流モーターのグラフが出ていますが、直流モーターは最大トルクの50%のところで力学的パワーが最大になります。そこからさらに大きな力を加え、モーターの動きが止まったところが、実は熱生産が最も大きくなります。ですから、過度な負荷をかけ続けると、そのうち煙が出てきて焼き切れてしまうのです。その半面、どんなに速く回転していても、負荷が小さい状態であれば熱生産が小さいのでオーバーヒートは起こしません。

エアロビによるダイエットも筋肉の特性を利用している

 このように、筋肉と直流モーターとは、全く逆の性質をもっています。仮にモーターを筋肉の代わりにヒトの身体に入れてみたとすると、ただ姿勢を維持しているだけで煙が出てくるということになってしまいます。そうならない筋肉は、生物の身体に非常にマッチした熱特性をもっているといえます。

 そのことはヒルの研究によって70年以上前にわかったのですが、筋肉のようなモーターの作り方は今のところわかっていません。そういうモーターが作れるようになれば、ケガなどによって筋肉が使えなくなってしまったとき、人工の筋肉として埋め込んで肩代わりさせることも可能になるはずです。ただ、そんな日が訪れるまでには、まだしばらく時間がかかるでしょう。

 話は少し変わりますが、ダイエットのために運動をしようとした場合は、こうした筋肉の特性を大いに利用することができます。筋肉にかける負荷を小さくして、たくさん動くようにすると熱生産が大きくなるので、エネルギー消費も大きくなります。重いものを持ってジッとしているときはあまり汗をかきませんが、何も持たずに動いていると汗がダラダラと流れ落ちてきます。エアロビクスなどは、その特性によって効果を生み出しています。ですから、体重を落としたい人は筋肉に負荷をかけすぎずによく動くようにするといいでしょう。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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