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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉はトレーニング開始から1週間で太くなり始める

第38回 筋肥大と筋パワーのトレーニング効果

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

トレーニング開始から1週間ほどで筋肥大は起こり始める

 周囲径が10%増すと、断面積と筋力は20%増すというのが一応の目安です。ただ、それはあくまで目安であり、周囲径を測っただけでは筋肉の中がどうなっているかを正確に知ることはできません。もっと確かなデータを得るためには、MRIを使って筋肉の断面積を測ることが現状では最も信頼性の高いやり方といえます。MRIで連続した筋肉のスライスを10枚ほど撮影し、平均値を取るというのが通常の方法で、ボディビルダーの例とは違い、測定の際は脱力するのが普通です。

 最近はMRIの精度がよくなったため、従来よりも小さな変化を見つけられるようになってきました。かつては5%くらいの変化がないとMRIで差異を認められなかったため、本格的な筋肥大が起こるまでには1~2カ月は必要と考えられていましたが、最新の装置では1週間ほどで変化が見えるようになっています。したがって現在は、トレーニングを開始してから比較的早期の段階で、筋肉は少しずつ太くなり始めると考えられています。

ピークパワーだけを見てもトレーニング効果は評価できない

 続いて筋パワーのトレーニング効果ですが、これは筋肉の「力―速度関係」から求めることができます。パワーは力×速度なので、縦軸の力と横軸の速度とを掛けていけば、力とパワーとの関係を簡単に導き出すことができます。その上で、ピークパワーがどう変わったか、パワーを出せる範囲がどのくらい広がったか、といったことを分析していくわけですが、基本的にはピークパワーだけで考えるのではなく、パワーカーブの特徴がどう変わったかという見方をする必要があると思います。

 簡単に筋パワーを測定してくれる装置もありますが、それはある一定の荷重をかけたときのパワーにすぎない場合が多く、その荷重がパワーカーブのどの部分に相当するかということまではわかりません。負荷や速度をいろいろと変えていったときに、パワーカーブがどう変わったか。その変化を見ないと、トレーニング効果を正しく評価することはできません。

 例えば、最大筋力の30%程度の軽い負荷を使って素早い動きでトレーニングをすれば、最大筋力はあまり伸びていないのに30%でのピークパワーだけが上がるという結果になります。神経系の機能が高まることが、その要因です。これでもトレーニングによってピークパワーが上がったという見方をすることはできますが、それはあくまで一部の評価にすぎません。

 逆に、重めの負荷を使って筋肥大を促すようなトレーニングをした場合は、ピークパワーもそれなりに上がりますが、パワーを出せる力の領域全体が広くなるという効果が得られます。

 筋力や筋肉のサイズを変えずにピークパワーだけを高めたいという特殊な目的がある場合には、低負荷強度でスピードを重視したトレーニングでもかまいませんが、いろいろな状況で大きなパワーを発揮できる筋肉をつくりたいという場合には、30%のポイントだけピークが上がってもあまり意味はありません。ですから通常はまず筋力を高め、ピークパワーを高めると同時に、大きなパワーを発揮できる力のレンジを広くすることが重要となるのです。

トレーニング効果を知るには、
ある筋肉の同じ場所の太さ・筋断面積を
トレーニング前後で測って比較するとよい。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
ベースボール・マガジン社 商品検索&販売サイト


この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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