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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

「上り」より「下り」の坂で筋肉痛になる理由~伸張性領域で起こること(2)

第16回 力のコントロールは動員する筋線維の比率で決まる

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋肉を構成する筋線維が、負荷に応じてどのように間引かれていくのかについて考察します。スロートレーニングが、筋肉に効く理由も納得です。

負荷をゆっくり持ち上げるときに 筋肉の中で起こっていること

 前回(参照記事:「筋肉にリミッターがかかる仕組み~伸張性領域で起こること」 )は、筋肉に過大な負荷がかかった状況(伸張性収縮)での力発揮について説明しました。今回はその続きです。

 過大な負荷とは、等尺性最大筋力を超える負荷で引っ張られるということ。そういうと、力を出している筋肉をさらに無理やり引っ張る、とてつもない重いバーベルをゆっくり下ろす…といった特殊な条件を思い浮かべてしまうかもしれません。しかし筋線維レベルでは、普通にバーベルやダンベルを上げたり下ろしたりしているときにも、常に同じことが起こっています。

 等尺性最大筋力よりも軽い負荷であれば、筋肉が短縮性収縮をすることによって、その負荷は持ち上がります。しかも、持ち上げる速度はコントロールが可能です。例えば、等尺性最大筋力に対して50%程度のバーベルであれば、100%の力を使うことでかなりのスピードで持ち上げることができます。

 では、その50%のバーベルをあえてゆっくり持ち上げようとした場合は、身体の中でどのようなことが起こっているのでしょうか。

 実は、筋線維の動員の仕方に変更が加えられています。1本1本の筋線維が力を抜くのではなく、使用する筋線維の数を減らすことによって発揮される力がコントロールされているのです。動員する筋線維を100%の状態から70%に減らせば、筋線維1本にかかる相対的な荷重は大きくなるので、その分ゆっくりしたスピードで負荷が上がっていくということになるわけです。その際、個々の筋線維にかかる負荷は、均等に配分されていると考えられます。

運動を起こす仕組みを筋肉全体ではなく、それを構成する筋線維の単位でみると、負荷やスピードによって働きを上手く間引きながら力が調整されていることがわかる。(©Luca Bertolli 123rf)

筋肉全体と筋線維単位とでは状況が大きく違う

 負荷を下ろす際も、基本的には同じことが起こっています。等尺性最大筋力の50%の負荷に対して、100%の筋力を使うと持ち上がってしまいます。そうならないように、下ろしたいスピードに合わせて筋線維を間引くという作業が行われます。50%の筋線維を使えば負荷の動きが止まり、それより少ない筋線維になると負荷は下がっていきます。

 ゆっくり下ろすほうがより大きな力が必要になるので、同じ負荷なら動員される筋線維の数が少ないほど下ろすスピードは速くなり、筋線維の数が多くなるほどゆっくり下ろせるということになります。頭の中で下ろすスピードが決められたところで、自動的に筋線維の間引き方が決まるのです。

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