「馴化(じゅんか)」が起こったら刺激のタイプを変えてみる
ただ、筋肉を太くする要素がたくさんあるからといって、あらゆるものに手を出そうとすることが誰にとってもプラスになるとは限りません。取り組んでいる競技、抱えている欠点などによって、選ぶべきトレーニングはおのずと変わってくると思います。
例えば、瞬発的な能力をもった筋肉をつくるのか。それとも持久性の高い筋肉をつくるのか。目的が違えば、具体的な手法にもかなり違いが出てきます。
また、筋肉のつきやすさは個人によって多少の違いがあり、大きく分けると強度を重視したほうが発達しやすいタイプ、逆に少し強度が低くても量を増やしたほうが効果が表れやすいタイプがあると思われます。自分がどういうタイプに属しているのかを知り、トレーニングを選ぶ際の基準にしてもいいでしょう。
最近は遺伝子の研究も進んでいて、筋肉のつきやすさを判断しやすくなっています。ただ、そうした科学的な根拠に頼らなくても、ある程度トレーニングに親しんでくれば、自分がどちらのタイプなのか感覚的にわかってくるかもしれません。それを早い段階で把握することができれば、その後の成長に大きな影響を与える可能性もあると思います。
自分のタイプがわかったとして、同じタイプのトレーニングばかり続けることも推奨はできません。生物の体には「馴化」という特性があり、一定の刺激しか与えていないと身体が慣れてきてしまい、あまり反応しなくなってくるからです。いわゆる「伸び悩み」は、そんなときに起こります。
タイプ的に高強度・低回数のトレーニングが合っている人でも、馴化が起こってしまった場合は、一時的に低強度・高回数のトレーニングに変えてみるなどの工夫が必要です。
あらゆるトレーニングに手を出しても
プラスになるとは限らない。
取り組んでいる競技、抱えている欠点などによって、
選ぶべきトレーニングはおのずと変わってくる。
(構成:本島燈家)
東京大学教授

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