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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉にリミッターがかかる仕組み~伸張性領域で起こること

第15回 「頑張れる人」ほど要注意、腱断裂などのケガの危険性も

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。今回は、筋肉の力を制御するリミッターの仕組みについて。筋肉の出力方法は様々にありますが、運動の違いのほか、体のパーツによって、リミッターのかかりが早い筋肉、遅い筋肉があるといいます。

伸張性収縮のとき、筋線維は2倍もの力を発揮できる

 前回までの内容は、等尺性収縮と短縮性収縮という条件下でのパワー発揮についての話でした。

 しかし、ご存じのように実際の運動はこれらの条件だけで起こるのではありません。筋肉が力を出しながら、より大きな力で引き伸ばされている状態―伸張性収縮もあるわけです。

 今回は、その状態のときに何が起こるのかを説明しましょう。

 筋収縮については、1本の筋線維と、筋肉全体それぞれについて考えていく必要がありますが、まずはわかりやすい筋線維のほうから考えていきましょう。

 等尺性最大張力以上の力をかけると、外力に負けてずるずると引き伸ばされます。力-速度関係をグラフで表すと、下図のようになります。

図: 過大な負荷のもとで筋が伸張される場合(伸張性領域)を含む力-速度関係の模式図

 速度がマイナスになっているところが伸張性収縮ですね。ただ、引き伸ばされてはいるのですが、実際に筋線維が出している力そのものは、外力に比例して大きくなっていきます。収縮中の筋肉を外から強制的に引っ張ると、筋線維はものすごく大きな力を出すことになるのです。

 具体的にいうと、等尺性最大筋力の1.8~2倍ほどの力を出しながら伸張される。そして、ある程度までは耐えながら引っ張られていくのですが、ある一線を超えたところでストンと急激にギブアップするということになるのです。

 なぜ、等尺性最大筋力の2倍もの力を出せるのかというと、これは筋肉が収縮するときの分子レベルでの収縮機構に依存しています。アクチンとミオシンという分子の相互作用にある特徴があるために起こるのですが、それについては回を改めて解説したいと思います。

筋肉全体になると、もっと早く限界が訪れる

 では、1本の筋線維ではなく、筋肉全体ではどうなるでしょうか。

 筋肉は筋線維の集合体ですから、基本的には同じことが起こります。強制的に引っ張られるような条件下では、筋肉は大きな力を出しつつ、動きにブレーキをかけるようにしながら引き伸ばされていく。そしてポテンシャルとしては、やはり等尺性最大筋力の約2倍のところまで力が出せると考えられます。

 ところが、いざ実験をしてみると、そこまでの強い力を発揮することはできません。なぜでしょう。

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