筋力の全貌を把握するには等張力性条件の測定がベスト
先述の等速性筋力計はモーターで動かしているため、速度に限りがあります。いい方を換えると、人間が発揮できる速度すべてに合わせられるほどの、性能のいい等速性筋力計はありません。現在ある等速性筋力計の3倍ほどの速度まで精度よく出せる装置があれば、かなり広範囲にわたって測定が可能ですが、実際に人間が出せる最大の速度に比べると、等速性筋力計がカバーできる速度はずいぶん遅い。等速性筋力計で測れる力―速度関係は、全体の力―速度関係の3分の1程度にすぎません。ところが、等張力性短縮速度を測定すると、負荷が軽くて速度の速いところから、負荷が重くて速度がゼロになるところまで、ほぼ全域を測定することができるわけです。
ということで、筋力の全貌を把握するには、等張力性短縮速度を測るのがベスト。しかし、残念ながら、この測定方法は非常に難しいというのが現状です。まず、慣性などの影響まで考慮された正確な測定装置を作ることが困難ですし、測定できたとしても、今度はデータを処理して分析する専門的な知識が必要になります。スポーツ動作に直結する筋力の評価という点では等張力性短縮速度を知ることが理想ですが、いつでも誰でもそれが測定できるようになるまでには、まだしばらく時間がかかりそうです。
等張力性短縮速度を測定すると、負荷が軽くて速度の速いところから、
負荷が重くて速度がゼロになるところまで、
ほぼ全域を測定することができる…。
(構成:本島燈家)
東京大学教授

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