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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋肉を太くするカギを握る「インスリン様成長因子」とは

第58回 トレーニングの容量を高める(2)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

「乳酸は疲労の元凶である」は誤り

 循環型ホルモンにまつわる話は、「乳酸疲労物質説」とよく似ています。

 筋肉がオールアウト(※筋肉を限界まで使った状態)に至るようなトレーニングをすると、結果的に血中乳酸濃度が上がります。筋肉周辺の乳酸濃度も局所的に上がります。そういう現象だけを見て、長い間、運動と疲労との間には乳酸が介在していて、乳酸そのものが疲労の直接的な原因であると考えられていました。

 しかし最近では、乳酸は疲労を起こす物質というより、筋肉のエネルギー源としても重要な働きをする二次的な代謝産物であるという見方のほうが強くなってきています。乳酸がたくさん分泌されるタイプの運動は、短い時間で筋肉にたくさんのエネルギー消費を行わせたということになるので、それが強い運動であるという証しにはなります。したがって、血中乳酸濃度が上がったら、それを元に戻すための休息が必要になります。ただ、「乳酸は疲労の元凶である」「運動中に乳酸が出ないようにしたほうがいい」といった考え方は誤りなのです。

 1980年代後半から2000年代前半までは、分泌されるホルモンを頼りに、さまざまなトレーニング処方に関する研究が進んだという歴史的な経緯があります。なかには、その時代の知識を今でも引きずっていて、「成長ホルモンが出るから効果が高い」という考えから脱却していない見方が一部であるのも「乳酸疲労物質説」と同じ状況といえます。これらの考えは、そろそろ改めていく必要があるでしょう

トレーニングをすると筋肉から分泌される
「インスリン様成長因子」(IGF-1)は、
局所的に働いて筋肥大に貢献する。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
ベースボール・マガジン社 商品検索&販売サイト


この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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