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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

スポーツ動作の質と力に関わる、筋肉の「動的特性」

第12回 貝、昆虫、カエル、ヒト…動物種の筋肉はすべて同じだった

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

筋収縮時の力‐速度関係

 筋肉も基本的にはモーターと同じです。力は強いけれどもスピードは出ないというタイプもあれば、スピードはあるけれども力は出ないというタイプもある。自分が求めるパフォーマンスに対してどう筋肉を改善していくかを考えたときも、単純な力だけでなく、速度も視野に入れてアプローチしていくことが必要になってきます。

 そこでモーターと同じように、筋肉の力−速度関係を調べてみます。筋肉にかける負荷を大きくしていったときに、筋肉が出せる速度がどう変わっていくか。これを肘の屈筋(上腕二頭筋)で調べる研究が昔から行われてきました。さまざまな荷重をかけ、思いきり肘屈曲を行ったときの速度を測定します。かける重さをどんどん重くしていくと、屈曲するスピードは徐々に遅くなり、やがて止まってしまいます。図2は、私の研究室で測定したデータですが、このように双曲線で表される結果となります。

図2 装置で調べたヒト肘屈筋の力−速度関係
[画像のクリックで拡大表示]

 これは誰でも経験的に理解しやすいでしょう。軽いものは速く動かせるけれども、重たいものは速く動かせない。トレーニングにおいても、バーベルやダンベルをどんどん重くしていくと、持ち上げるスピードが遅くなり、やがて持ち上げることができなくなってしまいます。実験でも、その通りの結果となるわけです。

双曲線状の関係はあらゆる筋肉に共通した特性

 スピードの落ち方としては、負荷が軽いところのほうが険しく、だんだんとなだらかになっていきます。これが直流モーターと違うところで、モーターは直線的に落ちていきますが、筋肉は下に凸の曲線になるのです。そして速度がゼロになったところが、等尺性最大筋力ということになります。

 一方、負荷がゼロの状態で筋力が短縮できるスピードを、無負荷最大短縮速度といいます。ただし、重力環境下で負荷ゼロを達成するのはきわめて困難。そこで、非常に軽い負荷を使って負荷ゼロを推定するという方法がとられています。

 実は力‐速度関係が双曲線状になるという関係は、あらゆる筋肉に共通した特性です。原始的な動物である腕足類の筋肉もそうですし、貝、昆虫、カエル、ヒト…少なくとも私が調べた動物種の筋肉はすべて同じでした。しかも、筋収縮の原動力となるアクトミオシンというタンパク質で調べても、同じ特性を示します。

 この特性をどう解釈し、技術練習や筋力トレーニングにどう活用するか—。競技力アップを考えたとき、それが非常に重要な意味をもってくるといえるでしょう。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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