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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

最大筋力を発揮するために一番適した長さとは

第10回 筋肉は2種類のフィラメントが滑り合って収縮する 

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

“筋肉博士”石井直方先生(東京大学教授)が、筋肉のメカニズムや機能を毎回わかりやすく解説していきます。筋肉には最大張力を発揮するために一番いい筋節の長さがあり、これを「至適筋節長」と呼んでいます。それを作り出すためには、筋線維を構成する2つのフィラメントが巧みに関わっています

モーターでは真似できない 筋収縮のメカニズム

 前回(参照記事:「筋力と姿勢の関係」)は、「関節角度によって発揮される筋力が大きく変わる」という事実を述べました。では、同じ筋肉が生み出している力なのに、なぜそうなるのでしょうか。今回はその理由を説明していきましょう。

 仮に、ケガをして肘の関節が動かなくなってしまった人がいるとします。そこで人工関節を作って肘を動かそうとする場合、最も簡単なやり方としては肘にモーターを埋め込み、それで関節を回す方法が考えられます。しかし、モーターは常に一定の速度と力で動くのが基本ですから、腕が発揮する力は関節角度には依存しません。どのようなポジションでも一定の力が出ます。

我々が一般的に「筋肉」と呼んでいるのは、「筋線維」が束になったものを指している。今回の解説は、上図に示した「筋線維」よりもさらに小さい筋細胞の最小単位「筋節」で起こっている仕組みだ。(©alila-123rf)
[画像のクリックで拡大表示]

 人体はそうなっていません。筋肉には、単純なモーターとは大きく違った特性があるのです。

 そのメカニズムとしてまず考えられるのが、1本1本の筋線維がそういう仕組みになっているのではないか、ということです。筋肉は筋線維の束でできているわけですから、筋線維の特性は筋肉全体の特性のもとになっているはずです。

 関節角度の変化に応じて、筋線維の何が変わるか。それは長さです。肘の屈筋でいえば、肘が曲がれば曲がるほど上腕をほぼ平行に走っている筋肉は短くなり、肘が開けば開くほど長くなります。ということは、筋線維は長さが変わったときに発揮できる等尺性最大張力(筋線維を論じる場合は、筋力ではなく張力という単語を使います)が変わるのではないか、という推論が成り立ちます。

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