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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

最大筋力を発揮するために一番適した長さとは

第10回 筋肉は2種類のフィラメントが滑り合って収縮する 

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

最大張力を発揮する「至適筋節長」が決まっている

 最大張力を発揮するために一番いい筋節の長さ、これを「至適筋節長」といいます。筋節長というのは、筋線維の長さと同じ意味なので、筋線維として力を出すのに一番いい長さである、ということになります。

 ちなみに、ヒトの場合はカエルよりも筋節長が長く、2.5~2.7マイクロメーターほどのところに筋節長を固定すると、一番力が出るということがわかっています。筋線維は部位によっていろいろなタイプがあるため、絶対値としてはいえませんが、それほど大きな誤差はないでしょう。

 なぜ至適筋節長というものが生まれるのか―。少し難しい話になりますが、それは筋線維の構造から説明することができます。

 筋収縮は、筋線維の中の「太いフィラメント」と「細いフィラメント」という2種類のミクロな線維状の構造が滑り合うことによって起こると考えられています。図2(筋線維の横断面を模式的に示したもの)のように、細いフィラメントはZ膜と呼ばれる網目状の構造から左右に向かって伸びていて、一対のZ膜の中央部に太いフィラメントがあります。この一対のZ 膜に挟まれた構造が筋節です(筋節が無数に組み合わさって筋原線維ができ、筋原線維が集まって筋線維ができています)。

[画像のクリックで拡大表示]

 この太いフィラメントと細いフィラメントがお互いに滑り合い、筋節の中央方向に向かって力が発生することによって収縮が起こるという、「滑り説」が最も有力な説となっています。

 2つのフィラメントのオーバーラップ(重なり合い)が一番長くなっていれば大きな力が出ますし、オーバーラップが小さくなれば、それに比例して力が落ちていきます。最終的には力がぶつかり合ってしまって、それより短くなろうとすると内圧(内側から反発する力)も生じますので、さらに力が減少してしまいます。

 これは筋肉という構造がもっている宿命のようなもので、2種類のフィラメントが滑り合って収縮するというメカニズムである以上、どうしようもない特性であるといえます。つまり、どんな筋肉でも最大筋力を発揮するために一番適した長さをもっていて、その適した長さから 離れるほど筋力は減少してしまうという。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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