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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

「一気に加速、すぐに力を抜く」-バリスティックトレーニングのポイント

第55回 メカニカルストレスを高める方法(2)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

回数や重さではなく大切なのは動作の質

図 通常のスクワットとバリスティックスクワットの床反力の変化
筆者が体重86㎏のときに、40㎏のバーベルを担ぎ、フォースプレート(床反力を計測する装置)の上でスクワットを行った際の床反力を示す。【B】では、しゃがみ込んだ瞬間にバーベルを上方向に加速させるような動作で行った
[画像のクリックで拡大表示]

 バリスティックトレーニングやプライオメトリックトレーニングは、その動作の仕方からもわかるように、単純に筋力を高めるというより、筋力を実際の動作に結びつけることが目的といえます。力の発揮の仕方が問題となるので、いいかげんに行っても効果はありません。何回行ったか、何kgの負荷を持ったかではなく、動作の質が問われるのです。

 しかし、このトレーニングの難しいところは、発揮された力の大きさが見えにくいという点です。バーベルを担いでいれば負荷の大きさが見た目でわかりますが、自重負荷でバリスティックトレーニングを行っている場合、瞬間的にどのくらいの力が発揮されたかを肉眼で確認することができません。

 そこで重要になるのは、指導者の眼力です。その動作でしっかり力が発揮されているかどうか。あるいはバリスティックトレーニングとして適切な力発揮がされているか。わかる人はわかると思いますが、わからない人にはさっぱりわからないでしょう。運動をしている本人でさえ、自分の体のなかでどの程度の力が発揮されたのか、感覚的にはほとんどわからないと思います。

 床反力計などの専門的な機械を使って測定できればいいのですが、なかなかそうもいきません。外から推測し、適切な判断を下せる人の存在が重要になるのです。そういう難しいトレーニングであることを、選手も指導者も認識しておく必要があるでしょう。

「負荷を持ち上げる」のではなく、
「一気に加速させ、すぐに力を抜く」こと。
そこに力点を置いていれば、
それはバリスティックトレーニングといえる。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
ベースボール・マガジン社 商品検索&販売サイト


この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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