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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋パワーを高める、高負荷・長インターバルトレーニング

第54回 メカニカルストレスを高める方法(1)

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

バリスティックトレーニングのポイントは初期の加速度

 (2)のバリスティックトレーニングは、負荷強度とメカニカルストレスを別物として考える典型的なトレーニングで、メカニカルストレスは非常に強く、負荷強度は相対的に低いという特徴があります。

 例えば、何も負荷をかけずにジャンプをする場合、床反力(床を蹴ることによって戻ってくる力)はジャンプの高さに依存しますが、そこで瞬間的に発揮される力は自分の体重の4~5倍という大きなものになります。体重70kgの人が思い切りジャンプしたとすると、地面に対して300kgもの力を発揮することになるのです。

 負荷強度は自重(自分の体重)ですから、外的な負荷はゼロということになりますが、瞬間的な力発揮は300kg。通常のトレーニングであれば、発揮される力は負荷強度に相当するわけですから、230kg(300kg-体重70kg)のバーベルを担いで行うスクワットと同等の力が発揮されているということになります。

 ここで重要になるのは動きだしの加速度。力=質量×加速度なので、負荷が軽くても初期の加速度が大きければ、発揮される力そのものは大きくなります。高くジャンプするためには、上向きの大きな加速度が必要です。瞬間的に大きな力を発揮できれば加速度が大きくなり、高いジャンプが可能になるということになるわけです。

 瞬間的に出す力は大きいのですが、力発揮の持続時間は非常に短くなります。ジャンプする際も、地面に対して力を発揮している時間は1秒もありません。一瞬にして高い筋力が発揮され、次の瞬間にはストンと落ちる。そういう放物線を描くようなタイプの筋力発揮をするトレーニングを総称して、バリスティックトレーニングと呼びます。

 これはバーベルなどを使ったウェイト・トレーニングにも応用できます。最もメジャーなものは、クリーンやスナッチのようなクイックリフトです。かつてはアーノルド・シュワルツェネッガーも筋肉に激しい刺激を与えるために、好んでバリスティックトレーニングを行っていたそうです。

 一方、バリスティックトレーニングは通常のウェイト・トレーニングと比較すると、よりスポーツ動作に近いので、鍛えた筋力を実際の動作に結びつける上でも効果的です。次回はバリスティックトレーニングについて、もう少し詳しく解説したいと思います。

メカニカルストレスを高めるファクターには
「高い筋力発揮」と「十分な伸張性筋力の発揮」があり、
そのための4つの代表的なトレーニング法がある。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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