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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

昆虫の筋肉の特性をスポーツに生かせるか?

第30回 1秒間に2000回ものスピードで羽を動かせる「飛翔筋」の仕組み

力を出しながら伸張すると筋力は増強される

 伸張による活性化、短縮による不活性化という現象は、昆虫の筋肉だけでなく、ヒトを含めた哺乳類の筋肉でも少なからず起こります

 1つの例としては、この連載でもお話しした伸張性収縮。力を出しているときに筋肉が引っ張られると、非常に大きな力が出ます。さらに、その状態で短縮をすると、引っ張らずに短縮したときよりも大きなパワーを発揮できます。逆に、力を出したときに筋肉を緩めてしまうと、筋肉のパフォーマンスは落ちてしまう。これは、いわゆるプライオメトリックトレーニング(筋肉を伸張させてから切り返すことで、大きなパフォーマンスを発揮する)と共通の仕組みということができます。

 昆虫の場合、ミオシンというタンパク質と、アクチンという細いフィラメントを作っているタンパク質との配列の周期のズレが小さいせいで、この現象が起こりやすいとされています。なぜズレているのかは筋肉の七不思議なのですが、ズレていたほうがなめらかに収縮できるのではないかと研究者は考えています。筋肉が力を出しているときにギュッと引っ張ると、ミオシンとアクチンの配列の周期がぴたりと合うフェーズがやってくる。すると、普通よりもたくさんのミオシンが反応することができ、より強いパフォーマンスが発揮できる、というのが定説になっています。

 おそらく、ヒトの筋肉でも同じようなことが起こっていて、いったん筋肉を伸張させることで筋肉のパフォーマンスが増強されるという仕組みが働いていると考えられています。

 これを理解しておくと、スポーツパフォーマンスにもプラスの影響が出てくるかもしれません。

伸張による活性化、短縮による不活性化という現象は、
昆虫の筋肉だけでなく、
ヒトを含めた哺乳類の筋肉でも少なからず起こる。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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