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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

昆虫の筋肉の特性をスポーツに生かせるか?

第30回 1秒間に2000回ものスピードで羽を動かせる「飛翔筋」の仕組み

2kHzのスピードを生み出す飛翔筋の働き方の仕組み

 一方、カやハエの類はそうではなく、羽を上げる筋肉も下げる筋肉も同時に収縮する。しかも、収縮しっ放しであることがわかりました。同時に収縮しているのに、なぜ羽が上がったり下がったりするのかを調べてみると、その秘密は、体表の硬い組織――クチクラにありました

 昆虫のクチクラには、石油缶の蓋がもっているクリック機構のような性質があります。押されるとパコッとへこんで安定するクリックの特性、プラス、ゆっくり収縮する筋肉の特性。それが2kHzのはばたきの仕組みだったのです。

[画像のクリックで拡大表示]

 羽を上げる筋肉と下げる筋肉が同時に共収縮することによって、両方の筋肉とクチクラが1つのシステムとなって共振する。そして、羽を上げる筋肉がクチクラによって伸ばされると、「伸張による活性化」(ストレッチ・アクティベーション)という現象が起こり、筋肉の力が増します。増した力で引っ張り返すと、クチクラが逆にパコッと反対側に変形して安定化する。すると羽が上がるのですが、そこで羽を上げる筋肉が短縮すると、今度は「短縮による不活性化」という現象が起こり、張力が落ちてしまう。同時に、羽を下げる筋肉に伸張による活性化が起こり、羽が下がる。筋肉が共収縮している間、これが繰り返されているわけです。

 ブーンと音を立てている割には、それほど大きな筋力を発揮しているわけではありません。1回1回伸びたり縮んだりしていると使うエネルギーは大きくなりますが、基本的にはアイソメトリック(等尺性収縮)なので、見た目よりはるかに“エコ”な飛び方をしているといえるでしょう。

 人間に例えると、ボディビルのポーズのように筋肉にグーッと力を入れている間中、羽が動き続けているということになります。

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