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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

世界で一番スピードの速い筋肉は?

第29回 ハエやカは、最大で1秒間に2000回も羽を動かしている

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

世の中で最もスピードの速い動作ができる筋肉とは?

 このように基本的な性質は同じであっても、筋肉によって数字で見たパフォーマンスはさまざまということになります。スポーツではスピードが大切になるので、例えば世の中で一番収縮する筋肉にはどんな特徴があるのかということを知っておくと、素早い動作をするための1つの参考になるかもしれません。

 では、世の中で一番スピードの速い動作ができる筋肉は何だと思いますか?

 それはカやハエなど、空を飛ぶ昆虫の筋肉です。カやハエが飛ぶときは「プーン」「ブーン」という高い音がします。音が高いということは、周波数が高いということ。つまり、それだけ速く羽を動かしているということになります。

世の中で一番スピードの速い動作ができる筋肉は、カやハエなど空を飛ぶ昆虫の筋肉です(©Noppharat Prathumthip-123rf)
[画像のクリックで拡大表示]

 どのくらい速く、高い周波数で飛んでいるかを調べた研究者がいますが、カの一種で最も速いものは、およそ2kHz(2000Hz)。これは1秒間に2000回羽ばたいているということになります。そのくらいのスピードで羽ばたくためには、0.5msec(ミリセカンド)というわずかな時間で仕事をしなければいけません。カやハエは、そういう筋肉を持っているということです。

 もし人間が2kHzのスピードで脚を動かせるとしたら、時速500km、あるいはそれ以上のスピードで走ることができることになるでしょう。そこで、そういうスピードを出す秘訣やヒントのようなものが、カやハエの筋肉にないだろうか? と考えてみたくなります。実際、こうした発想は大昔からあり、世の中には昆虫の筋肉ばかり研究している研究者もいます。次回は、このことについて紹介してみましょう。

世の中で一番スピードの速い動作ができる筋肉は…。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
“筋肉博士”石井直方先生の連載が1冊になって好評発売中!
『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

 日経Goodayのサイトでご紹介している「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」の連載が本になりました。

 筋肉の基本的な仕組みから、理想的なトレーニング方法まで、専門的に解説。

 全国の書店、またはベースボール・マガジン社サイトでお買いお求めください。

こちらからでもご購入いただけます
ベースボール・マガジン社 商品検索&販売サイト


この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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