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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

筋収縮の「形態」を変える4つの動き

第6回 トレーニングの現場で最も使われている方法は?

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

「等速性収縮」は一定の速度をかけて測定する

 3つ目は、等速性収縮。

 実は筋肉には、一定の負荷をかけるときに、その張力も一定に保たれていれば、筋が同じ速度で収縮するという特性があります。70年ほど前に報告されているこの性質を利用して、モーターなどを使って外側から筋肉が縮む速度を一定にすると、ある一定の速度下において筋肉が発揮できる力を測ることができます。逆の見方からすると、ある筋力を発揮するときに筋肉が出せる速度を測っているのと同じことになります。この方法は一定の速度でモーターを動かせばいいだけなので、等張力性収縮の測定よりずっと簡単です。

 ところが、これにもいろいろと制約があります。

 「速度を一定にして力を測る」ことと、「力を一定にして速度を測る」こととは厳密には1:1にはならず、たとえ速度を一定に制御しても筋肉が出す力は変化しています。ということで、等速性収縮はあくまでも簡便的なものであり、筋肉そのものの性質を詳細に調べるのにはあまり向いていません。とはいえ、理想の条件ではないまでも比較的簡単に筋肉の情報を得ることができるので、トレーニング科学の分野ではこの等速性筋力計が主に使われます(2ページ目の図参照)。

「増張力性収縮」は筋肉を短くさせながら負荷を高めて測定する

 4つ目は、増張力性収縮。これはバネやゴムのようなものを引っ張るときのように、時間の経過とともに筋肉が短くなる一方、筋肉にかかる負荷が次第に大きくなるという条件において測定します。バネやゴムは伸びに比例して弾性力を発揮するので、それらを伸ばせば伸ばすほど筋肉が発揮する力も増えていきます。こうした筋力測定はあまり使われない方法ですが、トレーニングとしてはよく行われていますね。チューブトレーニングや、昔流行したエキスパンダーなどが代表的なものです(2ページ目の図参照)。

 以上、4つの筋収縮の形態を説明してきましたが、トレーニング現場で最も多く使われているのは等張力性収縮です。プーリーを使って負荷を持ち上げることはもちろん、バーベルを使ったメニュー、自重負荷を使った腕立て伏せや懸垂なども、負荷は一定なので見かけ上は等張力性になります。こうしたトレーニングのことをアイソトニックトレーニング(等張力性トレーニング)と呼びます。

 ただし、プーリーなら問題ないのですが、フリーウェイトを使う場合は動作とともに負荷が変わってしまいます。ダンベルカールが最もわかりやすい例ですが、ダンベルが下にあるときはほとんど負荷がかかりません。持ち上げるに従ってテコの原理で負荷が大きくなり、前腕と床が平行になるポイントをピークとして、また軽くなっていきます。その繰り返しで負荷が常に変動しているので、厳密な意味でのアイソトニックトレーニングとはいえませんね。

(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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