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“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学

年をとると筋肉のタイプはどう変わる?

第28回 加齢とともに速筋線維が減る、その逆はない

 コーチング・クリニック(ベースボール・マガジン社)

加齢に伴って減っていく筋線維はII型

 死滅するのはI型もII型も同じではないか、という疑問が出てきそうですが、確率的にはII型の運動神経のほうが先に死滅するようです。II型を支配している神経細胞のほうがサイズが大きいため、それを維持するにはより多くのエネルギーが必要になるからです。I型の運動神経は指令を送る回数は多いのですが、サイズは小さいため、長もちするわけです。

 II型はサイズも大きく、支配している筋線維の数も多いので、脱落による筋肉への影響も大きくなります。II型を大企業に、I型を中小企業に例えるとわかりやすいでしょう。大企業が倒産すると世の中に与える影響は甚大です。ただ、それによって投げ出された社員がみんな路頭に迷ってしまうわけではなく、なかには中小企業に再雇用してもらい、会社の規模は小さくなってしまいますが、なんとか生き延びていける場合もあるわけです。

 ヒトの場合、加齢とともにII型が減り、I型が増える。その逆はないというのが定説です。同じ人間の同じ場所から筋線維を採取し、20代→30代→40代→50代→60代と年齢を追いながら調べた研究はまだないので、この説が完璧に正しいとはいえませんが、先に述べたサイズの問題からも、I型が減ってII型が増えるケースはなさそうだと考えられます。

 では、II型の筋線維が減ってしまう現象を、筋トレによって改善させることはできるのでしょうか。それはこれからの研究課題ですが、II型の場合、酷使しすぎて死んでしまうというより、あまりに使われないので不要という判断を下され、アポトーシス(自殺)の反応が起こると考えたほうが自然です。したがって、II型の筋線維を頻繁に使うようにすることが、寿命を延ばす1つの手段である可能性は高いと予想できます。

ヒトの場合、
加齢とともにII型が減りI型が増える。
その逆はないというのが定説。


(構成:本島燈家)

石井直方(いしい なおかた)さん
東京大学教授
石井直方さん 1955年、東京都出身。東京大学理学部卒業。同大学大学院博士課程修了。東京大学教授(運動生理学、トレーニング科学)。理学博士。力学的環境に対する骨格筋の適応のメカニズム、及びその応用としてのレジスタンストレーニングの方法論、健康や老化防止などについて研究している。日本随一の筋肉博士としてテレビ番組や雑誌でも活躍。著書は『筋肉まるわかり大事典』『トレーニング・メソッド』(ともに小社刊)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など多数。
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『石井直方の筋肉の科学』
B5判、140ページ、1500円+税 発行/ベースボール・マガジン社

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この記事は、ベースボール・マガジン社「コーチング・クリニック」からの転載です。

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